pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

寝てても読める

 はい。寝てばかりいても本を読めるのです。文庫版のこれなんか、読んぢゃう読んぢゃう!!

 

十字軍物語 第一巻: 神がそれを望んでおられる (新潮文庫)

十字軍物語 第一巻: 神がそれを望んでおられる (新潮文庫)

 
十字軍物語 第二巻: イスラムの反撃 (新潮文庫)

十字軍物語 第二巻: イスラムの反撃 (新潮文庫)

 

  ハードカバー版は図書館で借りて読んでいましたが、もう何年も前の話ですからね。   

 塩野さんは登場人物に『恋』していないとお話の書けない方なので、読んでいると誰がお気に入りなのか、すぐに解ります。文庫版一冊目は十字軍国家を建設した男たち、二冊目はライ病に侵されながらも果敢にイェルサレム王としての責務を果たしたボードワン四世、ま、サラディンも好きだよね。その戦略的能力が類まれであり、十字軍が十数年かけて成立させた十字軍国家を一か月余りの攻防でほとんど『再征服』してしまったんですから、お気に入りである事、間違いないですよね。

 さて、そんな訳で十字軍国家はほぼ全滅に近い状態になってしまいましたが、仕方ない。そもそも十字軍の発起人だった教皇ウルバン二世は、キリスト教世界からの戦争の輸出というか追放というかを目論み、十字軍国家まで建設してしまうとは思っていなかった(そもそもそんな事ができるとも思っていなかった)ようです。つまり成功し過ぎたのが第一次十字軍だったと。

 基本的にノルマン人がイングランド南イタリアシチリアを征服したような感覚で十字軍国家を建設したのですが、『キリスト教』を前面に押し出したがために、征服地での自らの孤立は否めなく、ヨーロッパからの援軍がなければ兵力が補充できないが、ヨーロッパの『善男善女』は「神がなさった事だから、ダイジョーブ、ダイジョーブ!!」という根拠のない楽観論のまま巡礼には訪れるけど、あとは無為無策でした。成功し過ぎると、何故成功したかを考えなくなり、現地の苦労も聞き流されてしまうという・・・なんか、どっかで聞いたような流れですね。

 んで現地化していかざるを得ない現地と、過激な思想のヨーロッパからの新規連中では異教徒に関して温度差があり、それを統合できるリーダーシップを持った人物がいれば良かったんですが、いたのは顔がいいだけの男だったと。サラディンにとっては運がいい事でしたね。

 次巻は『花の十字軍』と呼ばれる第三次から。今月末が楽しみです。