pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

あかん奴を借りてしまった

 戦略的観点から『川中島の戦い』を考察するとか何とか書いてあったので、借りたのですが、読み始めてげんなり。なんでだろうと思ったら、まず参考文献が軍記物はともかく(川中島の戦いに関しては一次資料がほとんどない。編纂物の、つまり同時代人か少し後世の人が書いた一級資料と称されるものが限界)、他が二十一世紀に入って書かれたものが一冊だけ。海外の軍事評論とかもあげてるけどだいたい1970~80年代のもの。そして書き方が、『戦国武将』個人能力に全てよっているような、つまり小説的なもので、しかも現在の研究成果がフィードバックされていない。

 これは趣味ではない。少なくとも研究書として読むつもりだった自分には合わないと思って読むのをやめました。発行が2016年だから大丈夫だろうと思ったけど、書き手の頭の中は二十世紀のままだったのかー。小説としてならいいんぢゃないですか。自分はダメですけど。

 なので研究論文集を上げときます。

 

足利義昭 (シリーズ・室町幕府の研究 第2巻)

足利義昭 (シリーズ・室町幕府の研究 第2巻)

 

  こっちの方が発刊古いやん!!つまり足利義昭織田信長の傀儡ではなく、京都周辺、畿内に関しては領主権、幕府権力を行使していたこと。ただ自力救済の中世において、実際に軍事指揮官であった信長の禁制を求めた方が、支配下の人々にとっては安心な場合もあったこと。そしてこれらは支配下の人々が自発的に幕府なり、信長なりに禁制を申請してもらっているのであって、信長側から介入した事は今のところない、という事です。

 また足利義昭は前代の幕府人臣を引き継ぎましたが、組織をそのまま使うのではなく、自らの側近を立場や役職に関係なく使っていたらしいということ。これは臨機応変と言えばいいけれども、悪く言えばコネ優先であり賄賂が蔓延る組織となります。まぁ当時は賄賂というか付け届けというのが当たり前の社会ですが、それでも一定の秩序というか順番があるのですが、それを無視する(金銭の多寡や人の親疎が判断基準になる不公平感)事が信長からのクレームになったのでしょうね。

 という研究成果を読むのが楽しいです。

 も、歴史小説はよほどその作家さんの作品性が好きでないと読めなくなったなぁ。