pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

何か読み終えられたのですよ

 以前、この方の書いた『武田氏滅亡』や『天正壬午の乱』が刺激的だったので、図書館にあるのを借りてみました。

 

戦国大名と国衆 (角川選書)

戦国大名と国衆 (角川選書)

 

  端的に言えば、戦国大名というものを想像するのに、アメリカと同盟諸国、旧ソ連と東側諸国と関係が似ている気がします。圧倒的な一強がその他の国と相互防衛条約を結ぶとか、NATOワルシャワ条約機構みたいな同盟軍みたいなもの。

 大名家は国衆の存立を保護、支援するが、国衆は軍役や課役などの義務を負う。

 存在としての国衆は一万石前後以下の戦国大名と言っていいもので、国衆の領土も『領』といったり『国』と言ったりするようです。

 例としてあげられているのが武田家のケースで、確かに長篠合戦で大敗しても滅亡しなかった(立て直す事ができた)武田家が、籠城中の国衆を見捨てた(実態としては織田家との和平で救出しようと試みたが、足元見られて、交渉引き延ばしされている間に失陥、全滅してしまった)高天神城の件で武田家の安全保障機構は信用がた落ちになり、木曾義昌の裏切りに端を発する織田家、徳川家、北条家の三方向からの侵攻に国衆はドミノ倒しのように靡き、しかけた信長すら驚くほどの脆さで滅亡していきます。

 しかし国衆たちの試練は始まったばかり、本能寺の変織田家勢力が旧武田領国から後退すると、その合間を縫って徳川、北条、上杉の争奪戦が。そしてそれが一息つくと、今度は織田政権の覇権を巡って羽柴秀吉織田信雄徳川家康の争いが始まると、羽柴方の調略によって信濃国衆たちの羽柴方、徳川方に別れたサバイバルが始まり、結局、徳川が羽柴に屈服して、いわゆる『豊臣政権』に包摂された時に、国衆は十万石以上の大名や、十万石未満の『小名』、つまり国衆よりも遙かに大きな権力体に吸収されるか、没落していくか、の運命を辿ります。

 荘園領主下請けだった『国人領主』が、その親請け支配を振り払い、自立的に領地支配を展開したのが『国衆』でした。その自立が否定された時、国衆も消滅していくのだと、そういう事です。

 歴史用語の解説にまるまる一冊使用したみたい本です。面白いですよネ。