pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

今日は大丈夫

 読み終えた本があるので。というか読み終えた小説という意味ですが。

 

海と毒薬 (新潮文庫)

海と毒薬 (新潮文庫)

 

 

 

海と毒薬 [Blu-ray]

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  高校時代に先輩が「スポーツ大会で敗退した人向けのビデオ観賞用」に持参してきた作品が、上記のBD。ええー!!こんなん見る人居るかな?と思ったら案の定閑古鳥でした。しゃあないよね。

 その後もこの白黒映画をちゃんと見た事はなかったのですが、原作小説の遠藤周作さん作品は読みやすいと解っているので借りてみました。例によって全集を借りましたので、新潮文庫版を読んだわけではないです。

 てっきり関東軍の人体実験部隊の話かと思ったのですが、舞台は九州大の医学部。学部長急死にともない、次期学部長争いで焦った第一外科長が、簡単な手術を失敗してしまい患者は死亡。予後不良で亡くなったと体裁を繕いましたが、こんな話は漏れる。

 起死回生の策として第二外科長も手がけようとした捕虜の生体解剖。つまり生きている人間に全身麻酔をかけて切り刻み、まぁどこまで体内機関が欠損したら死に至るか、という実験をしたという。

 第二次大戦中の米軍って圧倒的物量というイメージがあるから、なすすべもなく一方的に殴られたイメージがありますが、結構日本の防空隊も頑張っていたようです。んが、落としても落としても飛来してくるので結果同じ。ただアメリカ側にしてみれば無傷と言えず、捕虜になるパイロットも皆無ではなかったようです。

 話は肺に病を持つ会社員が、それまで通っていた老医師の下へいけない状況になり、代わりの医者を捜すところから始まります。薄気味悪い医師ですが肺への処置は的確で老医師よりも上手いぐらい(処置されても痛くない)。訛りから九州の人だろうとあたりをつけ、義妹の結婚式でF市にいった時、偶然九州大の医学部出身者と臨席します。そこから、どうも件の医師が、生体解剖に関わったらしい、という話が。

 話は一転して戦時中になり、医師はまだ研修生みたいな立場で、肺結核に冒された人々へ絶望的な治療を続けています。同期や上司、指導教官らは患者を治す事など諦めて、その状況でいかに出世するか、自分の立場を守るか、あるいは嫉妬や妬みなどが渦巻き・・・そして学部長工作を手術失敗で墓穴を掘った第一外科長が生体解剖に手を出す。

 もちろん倫理的に許される行為ではありませんが、人間のデータ録りという面において、これ以上のものはなく、良識とか良心とかが何故か欠落している同僚たちは淡々とこなしていきます。しかしどこか後ろめたいものがある。立ち会う軍人たちも術前は殺すだのなんだの威勢のいい事を言っていますが、いざ始まると黙ってしまう。

 なんでしょうね。単純に感想が書けません。なんかこう、読んでみて感じ取らないといけない小説ではないか、と思うのです。

 出演者みたら若き日の渡辺謙さんが、淡々と手術に参加する同僚役してみえますね。んで良心の呵責に苛まれる方を奥田瑛二さんが演じてみえます。渡辺謙さんは覚えていたんですよねー。たぶん大河ドラマ伊達政宗』の後に見たからかな?