pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

口内炎、痛い

 ネットで治療法を調べると、口をすすぐ、とか、口内をアルカリ性にしておく、とからしいです。とりあえず水で口をすすぐか。日記書いたら。

 そんな事はおいといて、読み終えた本のこと。

 

院政 天皇と上皇の日本史 (講談社現代新書)

院政 天皇と上皇の日本史 (講談社現代新書)

 

  美川圭という方の、同名の中公新書は持っていますが、そちらは院政の主催者である上皇法皇の事績がメインでしたが(確かね)、この本はどからというと運営やシステムに重きをおいているみたいです。なので外戚たる摂関家の影響力が弱い天皇が即位し、その天皇が自らの家父長権で天皇家を支配、運営し、幼い天皇を即位させ、成人すれば自らの直系親族である幼い天皇を即位させ、そうやって天皇を傀儡化し自由な立場から国権を欲しいままにしたのが院政でした。

 んが、別に何か政治的な主張があってやっていた訳ではなく、自分が思い通りに暮らしていく為の便宜としてやっているみたいで、まぁ行き当たりばったりですよね。なのでシステムとして完成されるのは院政らしい事をやっていた白河、鳥羽の両者の時代ではなく、成り行きで皇位に付き、結果的に院政の主催者になり、定見もなく、行き当たりばったりで治承・寿永の乱を泳ぎ切った後白河期に、下級の実務公家が家業として院政の文章蓄積を行い、効率化したみたいです。

 どうも日本の天皇家は、競合する勢力も、これを倒そうとする勢力も存在しないまま、君臨する事が当たり前になってしまったので確たる支配論理さえなく、「エライからエライ」で来てしまい、たぶんに成り行きまかせで続いてきたようなのです。よく言えば、柔軟、融通無碍。

 それが判明してしまったのが承久の乱で、後鳥羽上皇は自らが全てをコントロールしたいが為に、自分の意向に時として逆らう鎌倉幕府執権となった北条義時の排斥を企て、命令すれば実行される的な(一応反対勢力には声をかけ、的を義時一人に絞って孤立させるよう命令は下しています)気持ちで仕掛けています。

 ところが実態に即さない、恣意的な朝廷の命令に今まで苦しめられていた(と思っている)御家人たちは、自分たちの代表者を排除し、幕府を骨抜きにするつもりだ、と理解します(この辺りは幕府首脳御家人たちと源頼朝後家の北条政子が巧みに誘導しています)。結果は惨敗。以後天皇家皇位継承すら幕府にお伺いを立てなければならない、主体的な存在とはなり得なくなります。

 この病気は治らず、後嵯峨天皇も長男の後深草か、その弟の亀山か、はっきりさせずに世を去ったものだから(しかし可愛がったのは亀山の方)、最初は亀山の系統が皇位を継承しますが、後深草が幕府に訴えかけをして巻き返しをはかると(しかも面倒臭いから幕府は関わり合いになりたくない)、両系統が交互に皇位につくという妥協案がまたしても、なりゆきで成立し、本来、父の後宇多に中継ぎと宣告されていた後醍醐天皇が自身の息子への皇位継承にこだわった為に、これに容喙する幕府が邪魔だからって倒幕するという・・・思いつきかい!!

 本来ならこれでは幕府は倒れる筈はなかったのですが、鎌倉幕府内の矛盾が増大していた折も折だったので鎌倉(主に北条氏)VSその他の武士という構造に持ち込む事ができ、倒幕は成功します。だから、自分の弟と息子が北条残党に襲われて危ないから、行かせてくれって言う足利尊氏の願いを無下にしてしまった瞬間、つまり最大の武士勢力の支持を失った瞬間、後醍醐もまた失権への道を転がるという・・・一応、幕府の矛盾を解消する制度は作っていましたが、後醍醐本人にその意識はなく、朝令暮改をやらかしていたらしいですからね。やっぱり天皇家って成り行きなのか?

 そんな感じで天皇家は自らの権威と財力を分散、失墜させる自滅行為を繰り返し、最終的には室町幕府に財政的なケツモチをしてもらわなければ成り立たない存在に成りはててしまいました。それでも存続したのは、天皇家に変わる権威をつくる必然性を武士側が持っていなかったから、なんでしょうね。

 結果的には『無力な象徴』であった為に明治維新まで天皇家は存続し、明治憲法によって主権者と明記されても、そう振る舞う事がなかった為に(自ら軍を指揮して戦争に勝った天皇なんて、千年以上遡らないと存在しない)戦後の象徴天皇への移行も、そんなに抵抗なく行えたのではないでしょうか?

 現在の上皇は、この象徴たる天皇という存在を誰よりも考察し、そのあり方を模索された方です。他は『成り行き』で流されるばっかりで、その意味を本当に考えている人はいないのではないかしらん?皇室の員数がこのままでは先細りになってしまうから、何か抜本的な対策を考えないと、天皇制そのものが廃絶という事になります。あたしゃ、『天皇』っていう存在に対する人々の期待が、人間に対するものではない、その感情が非人間的ではないか?と疑問に思う時があるので、積極的に天皇制を廃絶すべきとは思いませんけど、もう少し、皇族の方たちの人間性を尊重する体制にしなければ、やめた方がいいんぢゃないの?とか思ったりもします。

 はい。ここに書いた事のどれが著者の意見で、どれがアタクシの意見でしょう?(ま、解るよな)詳しく知りたければ、この本、お読み下さい。視点が面白いです。