pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

本を早く読みすぎた

 はい。なので時間があれば図書館に返却&貸出をしてきたいのです。荷捌きは到着したら一時間もしないで終わるだろうし。そして今日は午後早い時間に配達する約束をお客さんにしていますし、二十日締めの請求書にもかかりたい。つまり、比較的時間が空いているのは朝のひと時ぢゃーん。という理屈です。以前のスタイルともいえる。

 では、今回借りて一番読破に時間がかかったもの。

 

ベトナム戦争―誤算と誤解の戦場 (中公新書)

ベトナム戦争―誤算と誤解の戦場 (中公新書)

 

  二十年近く前の本です。そしてベトナム戦争はもう半世紀ほど前の話・・・しかしこの本の著作時点でアメリカはベトナム症候群を克服していないといいます。それまでのアメリカは自分たちの戦争は正義の(神が嘉し給う)戦争であり、故に戦争の度にアメリカは強大になってきた、という論法がまかり通っていたのですが、1950年代の朝鮮戦争で旗色が変わり(負けなかったけど、イーブンで休戦)、このベトナム戦争で決定的に鼻っ柱を折られる事になります。しかも東南アジアの『小国』相手に、弁解できない負け(詭弁で負けていないと主張しているが、それを主張せざる得ないところが、まぁ敗北ですよね)。

 敗因は色々ありますが(そもそも自分たちの敵が何者なのかの把握すら行っていないし、味方として頼むものの正体すら知ろうとしなかった)この著作時点にまで引きずる問題になってしまったのは、政府への不信感であり、命を懸けても報われないと知った兵士たちの傷であり、そもそも自分たちが『正義』ではないとようやく自覚したところなんぢゃないですかね。

 著作者の『克服』が何を想定しているのか、よく解らないのですが、2000年代以降のマーベル作品、つまりアメコミヒーローもの映画を見ていると、主人公たちは白い手を持っていないのですね。それぞれが過去を持ち、苦悩し、自分たちの大切なものの為に戦う。結果として世間に認められる、みたいな感じ。これはアメリカという国の人々が自分たちのアイデンティティを再構築している、模索していると評価していいのでしょうか?

 今のアメリカはポピュリズムのトランプが政権を担っています。が、民主党候補たちの主張も中間層以下の人々の生活をどうするのか、という話題になっています。その点において世界には普遍的な問題。経済格差の拡大と経済中間層の減少(これが民主政体とって一番まずい事態)という言ってしまえばシステム的な民主主義の危機に陥っていると言えます。民主主義とは一体何なのか、それを構成運営する条件とは何か、現在それを満たす条件は整っているのか、そんなところから考えないと、今現在の社会に何が必要なのかは見えてこないのかも知れません。

 ま、民主政体なんて方便だから、どーでもいいやーって向きには関係ない話でしょうが(つまり現在、これ問題視していない政治家や識者は、別に民主政体にこだわる必要はない、と思っているかも知れない。危機への即応能力は寡頭政治や独裁の方が高いから。しかしそれがどういう事になるかというと、たぶん五年ぐらいで疲労して暴走して市民生活を抑圧しないと成り立たなくなる、と予想できるのですが。

 ただ一つ明るいと思うのは、ベトナム戦争を教訓として、戦争を用意周到に、短期間で、敵にも味方にも少ない被害で実行、終わらせるという思考が強く働くようになったということ。戦争は『悪』ですが、起こすのならば、起こってしまったのならば、早期に終結させる努力を諦めないというのは、評価できると思います。

 特殊部隊の展開、執行なんかは経済的にも安上がりだしナ。これもベトナムで泥縄的に逐次戦力の投入を行って敵味方の被害が拡大した反省によるものなのでしょうね。