pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

忘れないうちに

 昨夜見た映画は、なんとなーく録画しておいて、見るタイミングを計っていたのですが、特に期待していた訳ではなかったのですけれども、ああ、結構自分好みかも、とか思いました。

 

ベル・カント とらわれのアリア(字幕版)

ベル・カント とらわれのアリア(字幕版)

  • 発売日: 2020/04/24
  • メディア: Prime Video
 

  モチーフは1996年にペルーで起きた日本大使館占拠事件ですが、舞台や登場人物は創作です。その方が映像化しやすいしね。

 wikiの事件のあらまし記事をちょろりと眺めた限り、映画の内容は事件をなぞっています。実際の事件は天皇誕生日の祝賀会ですが、映画の舞台は副大統領の邸宅であり、日本企業の工場誘致の為にその社長と通訳を中心に、大使館やら宗教界やらの国内外の賓客を真似ていて、社長の要望により高名なオペラ歌手のリサイタルが中心になった夜会で事件は起きます。

 同じようにテロリストが投入し占拠します。大統領臨席という情報を元に突入したけれども、大統領は個人的な理由で(すごく下らない理由で)欠席している事が判明。それでも政治犯の釈放などの要求を貫徹する為にテロリストは立てこもりを敢行します。実際の事件では六百人という大人数が人質に取られましたが、そんな大人数を映像に収める理由もないので数十人規模。それでも十人前後のテロリストたちには管理も手に余る人数であり、実際の事件と同様、高齢者、女性、子供は解放されます。ただし、高名な女性オペラ歌手を除いて。

 ここから包囲するテロリスト、人質たちのドラマが始まる訳ですが、交渉役は当局の人間ではなく赤十字の職員。これも実際の事件で人質になっていた赤十字職員一人を連絡係にした事を題材にしているようです。長期にわたる立てこもりの中で、犯人と人質の馴れ合いというか、交流というか、そういうものが発生していきます。人質は教養あるハイソサエティがほとんど。一方のテロリストたちは元教師という隊長格以外は先住貧困層で他国語はもちろん、スペイン語もままならない、そして基本的には純朴な若者ばかり。暇つぶしで人質たちは様々な事を犯人たちに教える関係になり、また、まぁ創作ものでは不可欠な恋愛にも発展したり・・・

 しかし彼らの結末は想像通りで、その結果に嘆き悲しむ人質側の姿が痛々しいです。

 個人的には解放された人質たちが茫然自失、あるいは悄然とした姿でバスで去っていくシーンで切ってもよかったです。ラストシーンは蛇足っぽいなあ。

 個人の事情が巨大な何かに押しつぶされていく悲しみが印象的な作品でした。