pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

敗戦国の特徴

 第二次大戦の日本って、行き当たりばったりの戦線を拡大した挙句に、ボロッボロに負けたというイメージがあるのですが、最近ドイツもそうだったんだ、と知りました。

 

  漫画とかのセリフで「ドイツの科学力は世界一ぃぃぃぃ」とかいうのがあるのですけれども、技術力は生産力にイコールぢゃないし、政治とか情緒とか合理性とかけ離れたところが優先されると、早晩破綻していくという事が解ります。

 ヒトラーという男がどういう思想形成したのか、という本を以前に読んだので、比較的ノンポリ青年の彼が対一次大戦後の軍人事務所に勤めていて、そこを国防軍諜報機関により政治教育を受けて、反ユダヤ、反共産主義を増長させたと知っているので、国防軍が実はナチスの犯罪行為に有形無形で協力していたというのは想像できる事でした。反共とは違うところでドイツの東方植民地の為にソ連、いやさロシアに対して侵攻するというのは、国防軍も共有していたという事です。

 ただし、彼らは当時陸軍大国と目されていたフランスに対して、あまりにも鮮やかな勝利を得てしまったが為に、スターリンの大粛清で将校団がほぼ根こそぎ抹殺されてしまったソ連軍を侮っていました。後世に機密公開された情報を研究すると、この認識は間違いで、日露戦争で数に劣る日本陸軍に敗退した事を深刻に受け止めたロシア陸軍は戦争のドクトリンを研究し、ノモンハン事件日本陸軍に対してリベンジを果たしたロシア=ソ連陸軍は、当時最先端の陸軍ドクトリンを持っていました。

 端的に言うと、他国が戦闘の勝利を積み重ねによってしか戦争の勝利を得られないと考えていたのに、ソ連陸軍は、戦術レベルの作戦を有機的に組み合わせて、合理的な戦略目的達成を企図して戦役を計画しており、言ってしまえば無駄の少ない戦争計画を立てていた、という事でした。

 例えばドイツ軍は、ある一つの目標を作戦目標にして作戦を立て、それの勝敗が決してから新たな計画を立ち上げる訳ですけれども、ソ連軍は詰将棋のように展開した部隊、師団、軍を配置し、それぞれがあらかじめ支援し合いながら作戦を実行していきます。なので「畑から兵隊が採れる」と揶揄されるほど人員の補充が容易だったのは、後方の支援もともかく、ドイツ軍の攻勢に対して初期の奇襲攻撃時はともかく、その後はドイツ軍はそれほどソ連軍に対して有効な打撃が与える事ができなかった、という事です。もちろんそういう対応は本来ならばできたのに、それができる将校を根こそぎ排除してしまった為に、生き残ったソ連軍が実戦という過酷な経験を経なければ体得できなかったものですが。

 あと、それほど「必然」と考えていたソ連侵攻が極めて杜撰な戦争計画しか用意されておらず、というか、そもそもどういう状態になったらソ連が敗北を認めるのか、という事すら真剣に研究された形跡がない。だから攻勢に立っていたドイツ軍の目標は年ごとに変わるという杜撰なもので、それに対応する補給も後手に回り、言ってしまえば『無駄な勝利』を重ねていたとも言えます。どこかの日本軍が中国相手にやらかした事と、良く似ていますね。

 結果、恐るべき消耗戦を合理的に戦ったソ連軍の方が、もともとリソースで劣るドイツ軍を次第に圧倒していき、ついにはドイツの敗戦が決定します。そして絶滅戦争を仕掛けたドイツ国防軍に復讐するソ連軍の行為も非人間的で凄惨なものとなっていきます。

 ちなみにドイツは国民に耐乏生活を強いたが故に革命がおこり敗北した第一次大戦の事を理解しており、ドイツ人を優等人種とし豊かな生活を保障して、捕虜や他民族を奴隷よりも酷い使い捨て生産力として利用していました。つまりナチス国防軍、一般国民は共犯関係にあったといっても過言ではない。だからベルリンが瓦礫の山となるまで抵抗した、とも言えます。他人からの搾取によって得る豊かさ・・・まぁ戦後八十年近く経過して、こういう『帝国主義』的経済構造は変化してきている・・・と信じたいですよね、はい。