pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

やっぱり軍政家

 大木毅さんの書いた評伝が出たので読んでみました。

 

  まず、名将とか凡将とか言う評価は皮相的で、良くない形容詞ですね。解り易いから特にそう思いますし、この本を読み終えた時にも強く思いましたね。

 以前に読んだ評伝でも思ったのですが、山本五十六という人の評価は戦略家であり、これに関しては洞察力も鋭いと思いましたが、彼個人の、というよりも親友である堀悌吉の影響が強く、彼の思考を理解したから戦略家、軍略家として開花したみたいです。

 前線指揮官としての実績はなく(そういう時代は平時だったので)、戦術、作戦面では真珠湾攻撃以外は首を傾げたくなる判断も見えるので、この人が座るべき椅子は連合艦隊司令長官ではなかったなーっと。

 あとは、海軍軍縮条約に関してで、条約反対派ってという人々は何をした人なのかwikiですが、ちょろりとみると・・・やっぱり近視眼的な人ばかりですね。あとから対米戦反対になった人もいますけれども、ちょろりと考えれば海軍は軍艦という機械の塊を扱う職業です。その軍艦を動かす燃料が石炭から石油に移り、それが日本国内では生産できず外国からの輸入、それもアメリカから買うしかないという当時の現状を見れば、アメリカを敵に回したら早晩海軍など行動不能になる事など解り切っているし、基本的に制海権を握っている英米と協調路線を取っていれば日本近海で戦争が起こる可能性は、当時は限りなく低かったのですから、対米戦力比にこだわって国力を無視した建艦競争に走ったのは見栄とか派手な事は支持されやすいけれども、弱気ととられる事をすると評価が下がる当時の日本の空気というか、なんというか・・・

 こういっちゃなんですけれども見栄に命をかける武士のダメなところが出ちゃっているんぢゃないかと。できる武士は命を賭ける表明をする前に、損得勘定を済ませて勝てると踏んでからやるものですが、やっぱ新渡戸稲造の「ファンタジー武士道」か「武士は食わねど高楊枝」を真に受けていた時代だからかなぁ。

 ドイツの勢いに幻惑されて損得勘定を考える前にドイツにすり寄ろうとするところとかね、本当に近眼さんが大多数だったのでしょうね。

 最終的に海軍の『条約派』が放逐されてしまったのは、そういう理性的な打算、計算のできる戦略眼を持っている人が海軍の中でも少数派であったという事でしょう。こういう時、表に出なくても、その能力のある層が厚ければ厚いほど組織としての強靭さも維持されるのではないか、と思ったりもしたり、そうなると平であろうとも広い視座を持つ事には意味がありますね。少数のトップが力んだところで、その政策を理解して支持する一般人の力がなければ、彼らの政策が却下されたり、実施されても骨抜きにされたりする可能性が低くかも知れないのですから。そう思うと、人間興味を持った事は何でも学んだり考えたりするべきで、年齢とか性別とか立場とかでその可能性を否定するのは、その社会全体の弱体化を招くのではないか、とも思ったりしたり。

 そんな事を考えたりしました。