pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

懐かしい小説

 何やら新シリーズが始まるという事で十一月から復刊している小説です。

 

 

 最初の朝日ソノラマ版は1998年らしいですね。元ネタというか発想ネタはアニメ『トップをねらえ』で外惑星系に飛来した地球の遠征艦隊所属らしい艦船を確認しに行く話だと、今回のあとがきで披露されましたね。あれも切ない話だったナ・・・こっちはそんな感じではないですが。

 月軌道までは民間企業も宇宙開発事業にかかわっている近未来で、恒久的な宇宙における水資源問題解決の為に彗星核を確保するミッションがあったのですけれども、それが太陽風防護処置をしていたにも関わらず、太陽風によって砕かれてしまい、ミッションを推進していた航空宇宙産業大手への投資筋の融資がストップ。その為に経営破綻し、大手企業が持っていた資産、プロジェクトが競売にかけられる事になりました。そして件の砕かれた彗星核も。しかし月軌道外にあるものなので手を出すには前人未到のプロジェクト(金融機関が融資を止めるくらい)。競売を成立せず、逆に参加料を支払えば、最初に彗星核に到達した企業、個人に彗星核の膨大な水資源開発権が与えられるという。それに弱小航空宇宙企業が手を出してしまい・・・って話。

 この初版を読んだ時は「そうだよねー。水は大切だよねー」ぐらいの感覚だったのですが、宇宙開発とか天文学の動画を見て、過去の宇宙開発失敗談やら苦労話やらに触れる機会が増えると、宇宙空間において人間が生きていく環境を整える事が、いかに大変、というか現実の宇宙開発民間企業が無人機、無人ロケットに特化していく訳が解りました。無人と有人ではかかる手間が二桁も三桁も違う。特に水が問題で、地球上から持っていくのにこれほど大変なものもない。しかしそれがなければ人間は生きていけない。それが宇宙空間由来のもので賄えるなら、宇宙開発において人間が生息できる敷居が取れ程下がるのか・・・

 それを確保するレースが行われるのですが、搭載する推進剤が限られている・・・というか多く積んだとしても消費するエネルギー量は質量に比例するので、途中給油みたいな事をしなければ補充にならない。そういう手段で飛ぶチームもあれば、当時は試験段階、構想段階なエンジン(作中でも試作品ばかり)でローコストだけどエンジンのお期限は不安定、というものがあったり・・・そして他者の支援が受けられないところでトラブルが発生して・・・まぁ人間の敵は人間の悪意なんだよなーっというネタもありますが、笹本さんの作品ですから最終的には・・・まぁ読んで欲しいですよ。飛び立つまでに苦労、作り上げるのに苦労、飛ばすのに苦労、到達するのも苦労というお話ですが、最後は爽快感が得られますので、はい。