pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

中指立てたくなる

 題名からして物騒ですね。しかしこの映画を見た後の感想は、こんな感じでした。

 

 英仏百年戦争の中休み期間とも言えるフランス王シャルル六世治世下の事件です。公開当時の新聞の宣伝文句だかで『羅生門』がどーのこーの書いてあったので、中世ミステリーかしらん?と思っていたのですが、ええっと、映画の構成というか演出が『羅生門』式という事で、内容的にはあんまりかぶっていないかな?

 下級貴族の若妻が強姦されて、それを夫が犯人と元友人と法廷で争い、水掛け論になったので神前での決闘裁判になったという話を、最初は夫目線、次に加害者視点、最後に被害者の若妻視点で描いて、クライマックスの決闘となるのですが、感情移入は完全に若妻目線でして、となると当時の騎士階級を含めた男性たちに中指立てたくなるという・・・

 当時の慣習では貴族階級といえども女性は完全に財産扱いで、夫やその家族、親族からすると強姦されたという若妻の訴えは自分たちへの名誉棄損が第一であり、どちらかというと訴えた妻自身の不名誉にもなるという考え。常識ある貴婦人は沈黙するという感じ。自らの意見は封じられ、ただ貞節のみを求められ、破れば妻が一番ひどい目に合うって印象。

 さらにこの若妻の方が経営者としては夫よりも有能であり(マット・デイモン演じる夫は誠実でも蛮勇で独りよがりのところがあり、兵士としては優秀でも、指揮官として、領主としては評価できないタイプの人)、この人の味方になってしまうのです。

 加害者は夫よりも宮廷人であり如才がないけれども、性欲を満たす事しか考えていないので、ここで『羅生門』的なドラマにはならんなぁ、とか思ったりしたり。

 ラストは勝者を称えるシーンで終わるのですが、爽快感というものが自分にはなく、この時代に生まれなくて良かったという感情が湧きました。腕力が正義・・・

 振り返って日本の中世においては強姦が下での事件って、あんまり記録に残っていないというか、自分はそういう研究を目にした事がない。日本の中世においては女性も自己の財産と発言権を持っていましたから、ヨーロッパの女性に比べると財産持ちの女性はよっぽど人間扱いされている印象。貞節も緩く、姦通罪って現場を押さえないと訴える事ができなかったかな?ある意味自由恋愛社会に見えるし。

 ただ記録に残っていないだけで強姦は起こっていたはず。というかこういうのっていじめと同じ原理で、相手が反撃してこないと思うと仕掛けてくる気がするので、やられたら反撃して相手の人生を破壊するぐらいの事をしてやらないと。そういう事ができる相手には強姦は仕掛けないので、財産のない人、目下の人は訴える事もできないから、そういう被害にはあっていると思う。

 つくづく人間社会は弱者にしわ寄せが寄せられる社会だよねーっとか思ったりしたり。

 ラストのコメントまで読むと、少し溜飲が下がります・・・でも時代的には百年戦争再開になるので、やっぱり苦難の時代になるから、史実を基にしていたら若妻は幸せな人生を終えていて欲しいと思ったりしたりしまするよ。

 いや、結構したたかに生き残っているのかな?