pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

読み終わるのは、もう少し先ですが

 ずいぶんかかったけれども、ようやく終わりが見えたので。

 

 読んでいる最中にロシアがウクライナに侵攻して戦争が始まってしまって、一年前から計画している作戦なら、ウクライナは風前の灯・・・と思っていたら、ヤバい結果に陥ったのはロシアの前線部隊で、どうも超楽観的先入観を前提に、治安活動ぐらいでウクライナを制圧できると思っていたのが裏目に出ているようです。

 現在ロシア軍は長距離攻撃手段で無差別攻撃を続行中・・・本当の地獄はまだ続いています。

 んで、なーんかこの『アフガン侵攻』と規模の差はあれ、同じような展開になっているよーな気がする。ソ連→ロシア陸軍は優れたドクトリンを持っていて、現在各国陸軍の教範に多大な影響を与えている(少なくとも米軍や日本では)のですが、そんなロシア軍が何故泥沼の戦争を改善できず十年間もやらかした挙句、結局撤退し、ソ連崩壊の引き金となったアフガニスタンと同じ轍を踏んでいるのか?Twitterでは各国専門家が頭を悩ましているらしいですけれども、アフガンの時と同じく、正しい状況認識と戦略目標を持っていないからなのかも?とか素人は思います。

 ただしウクライナ侵攻は楽観論から始まっているみたいですが、アフガニスタンソ連にとって火中の栗であり、手を出す事は絶対に危険だと認識していました。にも拘わらず介入してしまったのは、現地の共産政権を何とか助けようとしたせい・・・

 アフガニスタンって国は、都市部の欧米の影響を受けた人々と、地方の農村で昔ながらの価値観、生活を送っている人々の認識の差が激しく、王国時代の国王は欧米の技術、思想を受け入れる事で近代化を果たそうとしたのですが、その中でソ連に留学した人々が共産思想に共鳴して共産党をつくり、クーデターを起こしたと。ところが共産主義者は欧米を学んだ都市部の人々の中の、更に一部分でしかなく、全国土では共感を得られない。それにお定まりの内ゲバが発生し、より過激な恐怖政治を行う方が穏健派を圧殺してしまい、このままでは血の雨が降る。アフガニスタンが混乱に陥るのは好ましくない。介入するしか・・・でもあんまり大げさにするのはイヤだ・・・という、ええっと俄か仕立ての計画で軍部の要求する兵力よりも少ない戦力を送り、事情が解らない現場を手探りで何もかもやらなければならなかった、と。

 十年間続いたのはアフガニスタンが多民族で、人口が各個に孤立したような形で集中していて(実は自分は長野県の状況に似ているのではないかと感じています)、山岳地帯でのゲリラ戦を掃討する事が難しかったのと、アフガン政府軍とソ連軍の間にも相互不信の軋轢もあったって事ですかね。

 結局財政的に耐えかねて手を引く事になりますが、お金がないから出征した兵士たちへの補償も十分ではない。この本が書かれたのは2011年ですけれども、その後遺症、不満に苦しむ帰還兵たちは数多く存在していたようです。撤退から二十年も経過しているのに、問題の抜本的な解決はされていないという・・・

 今回の戦争も、戦後の後始末まで見据えた計画とはとても思えず、勝とうが負けようが苦しみ死んでいくのは現場の人々であり、命令を下した連中ではないでしょう。国際社会の非難や制裁がなくても、兵士たち、戦場となった地域に住む民間人は全員が多かれ少なかれ癒える事ない傷を心や体に背負っていく事になる。それを直視し、全てを補償する心づもりなんて・・・ロシア政府にある訳ないか。