pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

『生贄』としての上総介広常

 鎌倉幕府はこういう事件が繰り返し行われるのですが、仲間討ちの後味の悪さ、彼を殺さなければならなかった必然性、この後の展開への伏線・・・第十五回は凄いドラマでしたねぇ、『鎌倉殿の13人』。キャスディングで佐藤浩市さんに決まった時、すぐに思い浮かんだのが大河ドラマ新選組!!』の芹沢鴨役の再来だな、と思ったのですが、今回はあちらよりも更に切ない。歳を重ねた佐藤さんに上総介広常の粗暴でも憎めないキャラクターが似合う。混乱、絶望、悔恨、それが流れるように表現されていく。クライマックスといっていい回でした。そしてこれは、終わりではなく幕府内抗争の始まりに過ぎないというのは、この後の展開で解る事なんですけれど。

 来週も楽しみです。

 んで、読み終わったもの。

 

 主人公のマーダーボットが『可愛い』という評価が良くTwitterで流れてきますが、自分は人間ぢゃない、人間嫌い(いわゆる嫌悪というより人付き合いが苦手)で、人間臭い、というところが好きです。ドラマなどの映像作品に耽溺する(画面で見なくても自分の中で再生してみている)事に至福を見出すところとか、生体部品とAIの混合構造体ゆえに、整理されたデータを駆使して最適行動を冷静に取りたいけれども、時として感情的、感性的に愚かしい行動をとる人間を守る(そういうプログラム、本人は契約と言っている)為に、ため息つきながら次善、次点の行動をとらざるえないとか、なんかねぇ、好きなんですよ。

 表題作は定住する事になった?プリザベーションという共同体の宇宙ステーションで、滅多に起こらない殺人事件が発生した事から始まります。プリザベージョン共同体って、安全面では日本の都市部に近いレベルで、だからこそ安全保障、警備装置である『弊機』からすると歯がゆい。実際の日本以上に犯罪が起こらないから警戒態勢とかがぬるいのですな。それに『弊機』がマーダーボット、つまり人殺し能力を備えている(警護対象を守るために、脅威を排除する機能だから必然的に備わっていると言える)事が人間にとっては警戒感を生んでいる訳で、まぁ抜き身の刃物を警戒するのと同じですね。

 前作もそうですけれど、ここのところマーダーポットの存在をプリザベーションに属する人間たちがいかに受け入れていくのか、という事を主題にした物語が続きますね。収録されている短編『義務』は違うけど、なんか、読了後にジワジワくるんですよ。ジワジワ・・・

 原作者は出版社とこのシリーズをあと三作書く契約を結ばれたそうなので、数年後にはまた続編が読めるかもですよ。楽しみですねー。