pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

『最終回のストーリーは初めから決まっていたとしても』

 ようやく届きました。

 

 6月の発売予定が8/30に延期されていましたので、このタイミングで全話、CM飛ばしなしでみました。やはりCMなしは手間いらず(当たり前

 アニメーションの美しさだけでは、ここまで入れ込む事はなかったかも。やはり羊文学の『光るとき』を使用したOPとかPVが印象的でした。あと今年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に合わせるかのように平家視点が見れたのも大きい。

 平家側の視点が平重盛一家である小松家というのも良かったかも知れない。大河ドラマでの小松家の人々は完全に脇役になってしまっているので(当たり前か)、平家の清盛家以外の人々がメインになっているのがね。まぁ平家物語平宗盛の扱いはヒドイので、仕方ない。あと主人公に架空の琵琶弾きの少女を設定して、これが『道化』のように様々な貴人のもとにいてもおかしくない雰囲気になっているのもヨカッタかも。

 しかしこの『平家物語』ってある意味呪いの物語でもあるのだよな、と。『一の谷』や『壇ノ浦』での平家一門の、潔く滅びるという行為が『美学』となり、武士たちの心に残り、遠く戦時中の高級将校にまで影響を及ぼしているように思えるのです。まぁ戦時中の海軍、艦長職が「艦と運命をともに」しちゃって指揮官不足に陥ってしまったのは、イギリス海軍のプリンス・ウェールズだかレパントだかの東洋艦隊所属の戦艦の艦長が総員退避命令を発し自分は背後に退去しようとしていたら間に合わず、結果的に「艦と運命をともに」してしまったのを、捕虜になったイギリス軍の水兵だか将校だかが誇らしく最初からそのつもりだったんだ、言ったものだから、これに感銘を受けた艦長職の日本海軍将校が「艦と運命を共にする」を実行しがちになり、戦争継続の為の優秀な指揮官をどんどん失ってしまった、という話なんですけれども、平家物語の『滅びの美学』が脳裏になかったとは言えないですよねー。

 アニメ『平家物語』は、その滅びの美学を乗り越えて『祈り』の物語に昇華させたところが良いと思います。その為に原作では目立たない徳子に焦点を当てて、夫に先立たれ、子を守る事ができず、一族と滅ぶ事もできなかった彼女にできる、そして生きている人々が等しく行う事ができる行為なのですから。『滅びの美学』よりもよっぽど良いラストでした。

 こういう価値観が現代ですよナ。


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