pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

大著をせっかちに読むと

 内容がぼんやりとしてしまうものですが、まぁ借りた本だとどうしても返却期限が気になりますから。

 

 中世初期研究の大家というイメージがある著者の方の集大成とでも言うべき作品ですが、当該期も諸説のある時代なので「どうなんぢゃろ?」と思うところもあります。しかし一番詳しくて一番バランスのとれた内容かと思います。この本が出た頃がアニメ『平家物語』がTV放送に先立ちネット配信を開始した頃でして、そして年明けの『鎌倉殿の13人』放送開始への期待が高まる頃だったので、読みたいなぁ・・・読みたいなぁ・・・でもハードカバーの大著は場所とるしなぁ。という事で購入を見送っていました。いずれ図書館で借りられるだろう、とも思っていたし。

 んで借りて読みました。平家物語吾妻鏡という軍記物、玉葉などの当時の貴族の日記などを駆使して描かれていますから治承・寿永の内乱、いわゆる源平合戦期の通史として読むことができます。

 言ってしまえば源平という二つの氏族が争ったわけではなく、旗頭がその二つの氏族のどちらかに属していたが為に、そのように言われているだけで、そして内乱の結果が平家の族滅であり、源氏頼朝家の覇権掌握である事から、そのように理解されたとも言えます。

 こうして改めて俯瞰的に見てみると平家の清盛は儀礼的な(つまり当時の朝廷でもっとも重要視されている事)に不案内にも関わらず政権掌握・・・財源の占有を図った為に多くの敵を作ってしまい、本来なら一方的な税の徴収に地方の利害が絡み合い、錯綜し、中央の朝廷すべてに向けられるべきヘイトが平家周辺のみに集中してしまったのが惨劇の下だったのかも知れないなーっと。

 富を搾取し蕩尽する中央に対する地方の権利主張がこの内乱で解消された訳ではなく、中央の恣意に任されていた地方人事が『鎌倉殿』の幕府が介在する事で調停される事になりつつあるっていうのが鎌倉幕府の時代とも言うべきで、しかし本来は『鎌倉殿』の家来『御家人』のみしか統率、管理、調停しなかった筈の幕府でした。その観点からすると平家も清盛宗家の『御家人』、重盛を祖とする小松家の『御家人』、頼盛を家長とする池家の『御家人』と分立した家中の連合体であった平家は、少なくとも支配を一元化した頼朝勢力に比べると統率の取れない集団であった、とも言えます(この統率をとる為に頼朝は最も労力を費やし、血を流している。数あった弟たち、一族が消え失せてしまうほどに)。

 ちょっと今読んでいる本のかぶっている部分があるのですが、焼き払われた東大寺再建の象徴である大仏の再建って、中央が安定した段階で一早くとりかかった事なんですけれども、これこそ富の蕩尽なんですが、しかし神仏の加護を祈る事が当時としてはもっとも普遍的な救済であったと理解すると(精神的な安定という側面からすると)、一概に無駄な消費とも言えないのかな、と思ったりしたり。

 どうなんでしょう?