pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

初代はツライよ

 というタイトルが閃いたのでつけてみましたが、それはこの二冊を読んだからでした。

 

 北条氏の前史を含めて時政が失脚し伊豆で余生を送るまで。ついで牧の方が京都で時政十三回忌を生き残った自分の子女子孫引き連れて豪勢に執り行ったところまでですかね。領域支配型の武士を想像すると、伊豆の猫の額ぐらいの土地しか持っていない北条氏は弱小でしかないのですが、伊勢平氏の系譜から伊豆在庁官人へ婿入りした伝承とか、京とにおける不相応な人脈の幅とかを考えると、彼らは在京武士で、物流の拠点を押さえていたり、また遠く四国伊予の河野氏に娘を嫁がせていたり、源頼朝からの恩賞地は九州へ東北の遠隔地に多いとか、どうも北条氏というのは領域支配型ではなく、物流を抑えた運送、商社的な性格の武士だったのではないか、と論じられています。

 北条時政の交渉能力や根回し能力は、そう考えると合点がいくと。

 あと比企氏を討ち、畠山重忠を討った事で鎌倉後背地の武蔵での利権獲得を獲得する訳ですが、あまりに露骨で御家人たちからの支持は得られていない。なので牧氏の変は政子や義時と示し合わせた上での追放、引退劇ではなかったかと。それで北条への反感を和らげたのではないか、と。まぁそう考えないと時政が殺されずに悠々自適の余生を送ったり、後妻牧氏が時政十三回忌を盛大に行う財力なんて確保できないもんなー。領地とか奪われなかったって話でしょ?

 でも出来合い追放説が本当ならば殺された平賀朝雅が哀れぢゃないですか・・・可哀そ過ぎ・・・

 こうやって見ると今回の大河ドラマで坂東彌十さんが演じたのは、はまり役でしたねぇ。

 

 場所が変わってドイツの話で、神聖ローマ帝国初代皇帝であるオットー一世が『大帝』って呼称されるの、なーんか納得いかなかったんですよね。あれかな?初代は偉いみたいな?と。

 違いました。東フランク国王に選挙で選ばれて、内戦を克服し、当時の東フランクにとっての蹉跌であるハンガリー軍を撃破し、弱体な王が続いた西フランク王国の後見役になり、イタリア王になろうと策動する野心家ベレンガーリオ一族を制し、ローマ教皇にテコ入れをし、ビザンツと和戦を繰り返し・・・それを推定人口五百万ぐらいの、群雄割拠している東フランクでやったという事なので、まぁ当時のヨーロッパで問題解決できそうな力量を持っていたのは彼の他いなかった、という事なんですねー。

 領域支配を広げた事に昔は業績の高さを見ていましたけれども、こういうフィクサーとして政治的安定を成し遂げる事も、大きな業績になるわけで・・・というか戦争は莫大な浪費ですもん。それなしに達成できればそれにこしたことはない(ってオットーは戦争には勝っていますけれども)。どのみち当時の統治技術では領域を広げるタイプの支配は非効率でしたしね。そしてイタリア人から「庶民の言語をしゃべる人たち」と言われた事から東フランクは自分たちがドイツ人だという自覚を初めて持った、というのも面白かったです。

 そういう意味ではオットー一世はドイツ人の始祖とも言えるのかも知れません。

 この人の辛さは初代だから、というよりも時代が、というべきかしら。弟や息子で反旗を翻さなかったのは幼かったから、とかそういう人ばっかだもんな。初代は、というよりも家長はツライよ、かしら。