pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

きっかけ

 『虚構推理』という作品を小説版、既刊を全て読みました。

 

 ちょうど小説版で表示された『鋼人七瀬』のエピソードのアニメ、一期に当たるのですかね。その前半六話分が無料公開されていた時期に見てみましてね。ちょっと面白いかも。謎解きも知りたいし、と思ったので小説版を大人買いして年末年始に読んでみました。漫画版を購入しなかったのは・・・嵩張るから(あ

 何年か前、漫画版の第一巻が書店で売り出された頃、ちょろりと試し読みを読んでみたのですが、推理ものかと思ったら妖怪とかモノノケが関わっているなら、不思議力で何でも何とかしちゃうんだなーっと思ってしまって、その時は手を出さなかったのです。んで無料で動画公開していた時期に暇つぶしで見たのですが、結構面白かった、と。

 十歳ぐらいの時に神隠しにあい、妖怪、モノノケたちの『知恵の神』になってくれという請願にこたえて、片目片足を失ってその立場になった主人公。その全力を知力に全振りしたような思考と生き方が小気味よいと感じると同時に、現時点の最新刊では、全力で『知恵の神』となっているが故の非人間的思考、秩序の為には身内の犠牲も当然という冷徹な思考に、価値観としての敵手が読者とともに気づくという展開。そして敵手が助けようとする主人公の『恋人』はとっくに気づいていて、そして冷徹な思考は他人だけではなく自身の身体さえ容赦なく秩序に捧げようとする主人公さえ無自覚に損ない続けている事にも気づいていて、人魚と件(くだん)という妖怪の肉を食って生き続けているが故に不死身であり、おのれの命と引き換えに実現可能な未来をつかむという『恋人』は主人公にもそうと感じさせずに彼女を守っているという物語。

 ありていに言って、最新刊の結末まで読んで、ああ、自分はここまで読んでようやく他の物語と『虚構推理』の物語を峻別できると感じましたね。『知恵の神』に不死身の『恋人』がいるけれども、その『恋人』は一歩引いて存在し、ちっとも主人公の謎解きに積極的に関わろうとしない。甘々イチャイチャな場面はほぼなく、子犬がじゃれあうような喧嘩とも言えない喧嘩を繰り返す関係の裏にあるものが見えた感じで、知力全振りの主人公は『情』が乏しい故に気づいておらず、それで正しいと『恋人』も感じている。

 恋愛ではない『愛』だよなぁ、と思うのですが、どうですかね。小説版の最新刊は来月出る予定だそうで、こいつは楽しみですぞよ。