pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

知ること

 小説と研究者の一般向けの本。ジャンルは異なるけれども、結構重要な事を教えてくれたような気がします。

 

 十二年前の作品ですか・・・という事は現在はより悪化しているという事かも・・・あ、コロナ過で『医療崩壊』と言われて久しいですもんねー。つまり、十数年前から医療現場は厳しいと。そりゃ医者の成り手が減っているというのも解るか。

 話は、病院の院長の息子でありながら医者への道を拒否し、システムエンジニアとして生きていたけれども、インドに出張している間に会社が倒産。帰国したら長らく音信不通の父親も亡くなっていて、しかし理事任期が残っているので代わりに理事を務めてくれないか、という話。そして理事会に参加してみたら病院は巨額の赤字を抱えており、身売りの話を進めなければ病院の存続自体不可能という大ピンチな状態・・・

 主人公が医者にならなかったのは親に対する反発というよりも、小児癌で亡くなったお兄さんの事があって、つまりその時の父親の背中に見た、病に対する無力感に恐れを抱いて避けていたようで、憎んでいる訳ではないし、病院に勤めている人に対する責任とかも感じて、再建策を模索するのですが・・・まぁ素人の思い付きでどうにかなるなら、巨額の赤字にはならないよねーっと。

 医療報酬に対する行政の目が厳しくなった・・・というかしょっぱくなったのが根本原因で、まぁ行政だって税収が減っている状況でない袖は振れない。しかし人の病状は法律で定められたとおりに進行してくれないのも事実で、法規定から延長してしまった分の治療費は病院の持ち出しになってしまう・・・これは当時の話なので今は改善されたのですかね?基本的に医療従事者を目指す人は、「人を助けたい」「人の役に立ちたい」という事に承認欲求が強い人であり、つまり治せる患者を法規定の期間外で収入にならないから、で、ほっぼり出せる事が心理的に難しい人が多いと言います。

 赤字傾向はそうやってできてしまう訳ですが、しかしそうならずに運営している病院も一方である訳で、そのからくりは・・・ってところが肝。でも、それは・・・という十数年前当時の現実を突きつけられるのですがね。いい悪いではなく判断の問題というのがね・・・今は改善されたのかなぁ・・・ラストは少しばかりの救いがありますが、そういう人生を歩むのも選択ですよねー、という感じ。

 薄々感じていた事を教えてもらった気分でした。

 

 古代の日本の大王家では、この葛城氏出身の后を迎える事が政権安定の理由でもあったのですが、んぢゃ、その葛城氏ってなんなん?って思っていたので読んでみました。これも十年ほど前の本ですけれども。

 端的に言うと葛城氏というが内陸に本拠地を持ちながら河川、海運を司る氏族と結びつき、大陸との接触を一手に握っていた・・・つまり古代日本最大級の勢力を持っていた、と。その豪族と婚姻関係を大王が結んだのは解りやすく、そして后たちが大王と必ずしも融和的ではなく、結局葛城氏そのものも百年余りで大王側からの仕掛けで滅亡してしまうのですが、そこで疑問に思ったのは、んぢゃ大王家は何によって『大王』と認められていたのだろう、と。

 考古学的な裏付けがないのですが、葛城氏を滅ぼし、その利権を吸収した割に大王家も混乱の時代に入ってしまい、確実に言える事は、近親者が絶えてしまって遠く近江、越前、尾張辺りに勢力圏を持っていた継体天皇を持ってくる他なかったという事。

 大きな利権を得た為に、それを巡って分裂争ったのか、それとも他に原因があるのか、というか畿内で巨大な勢力を誇った葛城氏を差し置いて、大王家が豪族連合の頂点に立った理由は何なのか、解りません。やはり祭祀王として宗教的な側面を重んじられて担ぎ上げられていたのでしょうかね?

 そのあたりの事は考古学的発見がないと判らないでしょうかね。葛城氏に関しては遺跡の発掘成果から判明したみたいですけれども、今上天皇陛下が歴史学を学んでいらっしゃるからなのか、古墳の発掘調査が行われるようですし、今後の研究の進展に期待です。