pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

発売している事に気づかなかった

 いや、ほんとに。予告された発売日から一年ぐらい経過してから発売されているなんて、気づく訳ないぢゃないですかー(棒読み

 

 第二次大戦以降のソ連とかアメリカとかの、まぁ軍事大国がどのような思想で戦いを進めようとしているのか、そういう事を解説している本です。

 戦略と戦術の間に『作戦術』というものを設定して、ばらばらに戦い、戦術的な勝利を積み重ねて、なんとなーく戦略的勝利を目指していた他国と異なり、ソ連は(個人の感想)詰め将棋のように各戦闘域を連動させ、有機的に戦略目標を目指していく、というもの。

 アメリカは豊富な物量で押しまくっていたのが、それでは勝てなかったベトナム戦争でも上層、主流は火力を集中させる事しか考えてなくて、部外者や非主流から「防御的に戦っていたらいくら軍隊があっても足らない」「機動戦をしなければ」となって1980年代から変わったみたいです。そりゃ主導権を握って攻め続ける方がローコストですもんね。

 それが2014年のロシアのクリミア占拠やらウクライナ東部二州の紛争で変化が生じたそうで・・・でも軍事力だけでなく諜報機関や、サイバー攻撃も駆使してインフラを麻痺させ、プロパガンダを展開して自軍に有利な状況をつくり、電撃的に勝利を収めるって・・・昔からやっている事が技術的に進歩しただけのように見えますがね?

 ただこちら側の人間からするとロシアや中国などの権威主義的な国家の危機感って妄想的にすら見えるのですが、これは『民主主義』というものに対して、まったく信頼を置いていない事に原因があるのかも。どうもそういった国々では陰謀論で民衆をコントロールできているから機能しているのであり、それが不十分な場合、混乱しか待ち受けていないと考えているみたい。権威主義的な国はむき出しのパワー・・・それが軍事力であったり権力だったり、経済力だったりするけれども・・・それらを使用して強圧的に混乱を抑え込んでいる、だから自国の秩序が維持されていると考えがちで、共同体に属している人々が自発的にそれを維持するという意志の力を信じていないみたいです。

 まぁだから巨大な汚職が横行すると言えるのですが。共同体を適法に運営する事が、もっともローコストで秩序を維持する筈なのですが、それを信頼していないから、お金の力で抜け道をつくったり、自らの生活だけを守ろうとするというハイコストを払う人のみが快適な生活を送れる国になってしまう。

 ただ『民主主義』が混乱をもたらし秩序を破壊するもので、それらを西側諸国が自分たちの国を亡ぼす為に仕掛けている陰謀、と『アラブの春』とかを評価したら、自分たちの秩序を守るという目的で親欧米政権となったウクライナを自国側に引き寄せようと軍事介入する理論になる訳ですが、しかしそれは自分たちの都合でありウクライナ国民の意志は関係ないですわな(ロシア系住民が本当に支持しているのかどうなのか、今となっては解らない)

 しかしそれにしても、まもなく一年が経過しようとするウクライナ侵攻。あまりにも手際が悪い。2014年の鮮やかな手並みと比して、えらい稚拙な感じ。「甘く見ていた」「楽観的過ぎた」なんですかね。どのみち終わって研究が進まないと何も判らない事だらけですけれども。

 今のアメリカ軍は今次戦争を踏まえて、また新たなドクトリンを考察している最中のようです。どうも軍隊そのものをコンパクトで機能させる為に、戦う為だけではなく、情報収集、操作、介入などなど、多機能を持たせつつあるようにも思えるのですがね。あと『平和』というものは拮抗、競合状態を言うという認識は広く共有されるべきですね。黙っていても『平和』にはならない。それを維持するという事は、相手に対して殴りかかる事が不利益である事を解らせ続けるしかないのだと。