pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

『名探偵が見下されるのはデフォ』

 読んでいるとそんな展開から始まるシリーズのようです。

 

 日本語翻訳の展開が何故か原語小説発表順ではない事に気づきまして、先日読んだ『蜘蛛の巣』以前の作品を「ええい、面倒だ。大人買いしてしまへ」とポチッとナしてしまいました。おかげで積み読の本が多くなっております。はい。

 『修道女フィデルマ』シリーズは七世紀のアイルランドブリテン島を舞台にしております。今回の作品が第一作目の長編小説。「ワトソン」役のサクソン人修道士との出会いから二人で殺人事件の謎解きを王より依頼されます。フィデルマは登場時よりアイルランドの上級弁護士で国王、アイルランドの大王からも敬意を払われる存在なのですが、今回の舞台はブリテン島のサクソン人社会でして、まぁ女性が低く見られる傾向にある。しかも二十代美貌となると性的視線にさらされる不愉快なストレスを主人公とともに感じられる訳で、序盤はいつも「このクソどもを一掃してしまえたら痛快だろうな」という暗い感情がムクムク沸いちゃう。なので読むスピードがいつも遅いです。中盤以降、主人公たちが足を引っ張られずに調査、謎解きを遂行できるようになるとスムーズに読み進められるという感じ。

 しかも時代背景としてアイルランドブリテン島に先行して布教していたケルトカトリックに対し、後からやってきたローマ・カトリックが教義論争を仕掛けているという。事件の舞台もどちらの教義を『真理』と認めるかという公会議の会場でケルトカトリック側の論者であり主人公の友人である修道院長が殺害されると。

 あと日本だと聖職者は不犯の僧侶を連想するので独身が基本と考えるのですが、この当時はまだ聖職者の結婚は普通で、独身を貫くべきという禁欲主義はローマ・カトリックにおいてもまだ少数派であったようです。責任ある立場の人間は結婚しないようですけれども。その辺の事情を踏まえてこのシリーズは読まないといけません。

 つまり痴情のもつれは聖職者であっても特別な事ではない、と。

 なのでフィデルマが自身の「ワトソン」役のサクソン人修道士に「これは絶対一目ぼれだろう」という描写があるのは不自然ではないし特別な事でもないけれど、彼と離れ離れにならない事を喜んでいる癖に、彼女はどうして自分がそういう感情に支配されるのか不思議に思っているという・・・おい!!

 ま、二人が互いの気持ちにきづいて大っぴらにラブラブしちゃうのもウザいですからのぉ。こういう事は物語主人公のさだめなのかも知れませぬ・・・