pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

広義の『コロンボもの』

 読んでいくと、容疑者候補と協力者の区別がはっきりとつくので、ドラマ『刑事コロンボ』みたいに最初から犯人が解っているタイプの推理ものに入れていいのかなぁ、と思ったりします。

 

 ローマ編である『サクソンの司教冠』の直後に読むべきでした。順番間違えたorz

 日本語版が原著発表通りの順番で発刊してくれれば、wikiで確認しなくても混乱しないのにぃ~、とか思いますが、でも振り返ってみると古代アイルランドという日本人には馴染みの薄い世界観で、本国では何十年も続編が出ている人気作を売る為には、やはり色々考えないといけないかもねー、と思ったりしました。今回の話は特に。

 フィデルマはアイルランドに五つある大国の一つ、モアン王国の王位を継承する一族に出身の修道女な訳ですが、今回は前王が危篤から死にいたり、王位継承予定者に指名されている彼女の兄へ代替わりするタイミングで隣国よりイチャモンをつけられた、という状況から始まります。

 (たぶん史実の実態と異なると思うけれども)古代アイルランドは成文法による紛争解決が最初に設定されるようで、隣国出身のある高名な聖職者がモアン王国内の修道院で殺されてしまい、その責任問題に絡めて何百年も前にモアン王国に奪われた土地を奪い返そうと隣国が訴えてきたと。武力紛争に訴えないのは、戦争がコスト高で、それに訴えるリストが高いことがあります。あと人死には遺恨を残す事になるし。

 この隣国の訴えが本当かどうか、この調査を兄から委ねられるのがフィデルマなのですが、この訴訟で紛争解決する社会である事を印象付けるのに、シリーズ最初のエピソードはちょっと似つかわしくないかも。宗教会議に絡んでの殺人事件でしたからね。日本語版で最初に刊行されたのは土地相続に関する訴訟から始まりましたし。

 今回の話で自分の印象に残ったのは、アイルランドと日本、ほぼ同時期の支配者層の継承方法が似ているかな、と。アイルランドは前任統治者の一族を中心に有力者による選挙で継承予定者を決める。日本の大王家は統治氏族の中から男女問わず適任と思われる長老を豪族たちの衆議で支持します。つまり統治者層による合議、或いは選挙によって統治者、継承予定者を選んでいるとこが似ているかなぁ、と。

 父子による血統継承が最も安定していますが、統治能力が担保されません(されません

 継承の安定よりも統治能力の有無が問題とされる、つまり社会の生産性の低さや安定性の低さが、能力の低い統治者の存在を許さない時代であると。まぁそんな感じですかね。

 小説の内容は、推理ものとして面白いです。あと主人公のフィデルマは結構『愚か』です。そういう向こう見ずな人間でないと物語は転がりませんが、今回のは無茶でしたね。本当にこんな人がいたらとても寿命が短いかもよ。