pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

アップデート

 昨日書いていた唐王朝の新書です。

 

 日本史で『遣唐使』という文言が大陸との通交、文物の輸入の象徴である事からも、中国歴代王朝の中で日本人の知名度が高い唐王朝ですが、昨日も書いた通り創立から前期、唐王朝が輝いていた時代は厳密には漢族の王朝とは言えない王朝でして、まぁ昨今の風潮からすると中国一国史の文脈で語ると、各王朝の特徴、役割は把握しづらいという常識があるようです。

 皇族のみならず王朝創設期の功臣たちも、遊牧騎馬民族出身者が大半であり、風俗もその文脈で語らないと中国的不道徳な人々になるだけという事例が数多くあります。また遊牧民族と共通の意識、常識を持っていたからこそ、太宗が北東ユーラシアの草原地域から西域の遊牧民国家を従え、覇を唱える事ができたとも言えます。

 しかし支配階層の軸足が中国本土にあり、政権運営科挙採用の漢族が増えると意識も運営も変わっていきます。南北朝時代以来、北辺の遊牧農耕両用地帯に遊牧民を主力とする防衛部隊を駐屯させているのですが、まぁ待遇とかね、劣化していきますわな。けれども唐王朝の曲がり角『安史の乱』は反乱という文脈と南北朝期から繰り返されてきた遊牧騎馬民族の独立、更にはこの後、いくつもの『征服王朝』が中国を支配する技術を会得する最初の機会とも捉えられるという事で、いやぁアップデートが進むなぁ。以前は『安史の乱』なんて建設的な意義がないみたいな説明ばっかだったもんなぁ。

 その後は中央政権の内紛(宦官と官僚、官僚対官僚)が不毛な方向に進み始めて、即位当初は再建意欲のあった皇帝も、周囲の人間があまりにも利己的で私欲を満たす事しか考えていないので、やる気をなくし、結局空中分解に近い形で崩壊するのですが、言われてなるほどと思ったのが五代十国の、黄河流域を支配した五代(後梁後唐後晋後漢、後周)の王朝とも言えない政権たちの後梁以外は遊牧民の王朝であり、その後継として立った統一王朝の北宋も、創設当初は唐と同じように遊牧民ナイズされた政権だったのかも?と思ったりしたり。

 ひっさしぶりに唐王朝の事がアップデートできましたわい。

 

 この本を読むと塩野七生さんの作品が『小説』である事が解ります。でもだいたい記述の流れは一緒。塩野さんの作品の方が想像力の可能性が語られているので、空間的な広がりを感じられます。しかしやはり『最初の近代人』というよりも、教皇との格闘も含めて『典型的な中世人』という方が近いですよね。世俗世界にも支配権を拡張しようとする教皇と、それを迎え撃つ皇帝って図式が中世ヨーロッパを特徴づけるものであり、フリードリヒの後継者たちはそれに敗れ去るのですが、敗れ去った途端に教皇はその身柄を政治勢力の恣意にさらされていくという・・・『教皇が太陽、皇帝は月』と言いたいに信じていたのでしょうけれども、実態は皇帝の武力によってその権威を保証されていた存在であり、その思い込みが粉砕されていく分水嶺とも言える訳で、それを再認識しました~って本でした。

 そういえば読んだ漫画を今週は書いていませんね。来週は漫画からスタートですかねぇ。