pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

ヴィルヌーヴ監督に映画化して欲しい

 読後の感想はそれでした。

 

 日本では年明けに公開されるだろうと言われている映画『砂の惑星』パート2の続編です。解説だか訳者あとがきだかには、この作品までヴィルヌーヴ監督も映画化したいと思っているらしいけれども、これも興行成績次第だとか。

 『デューン 砂の惑星』はエンターテイメントとして盛りだくさんの内容で、確実にその後の作品群、たとえば『スターウォーズ』には多大な影響を与えています。読んでいて楽しい。ハラハラドキドキ、陰謀、復讐、貴種流浪、立身出世、成功!!という感じなのですが、この続編は一転して憂鬱な展開です。見せられるのは繁栄の謳歌ではなく、統治の実際であり、軋轢、苦悩、圧制などなど、主人公ならずとも「どうしてこうなった?」と言いたくなるぐらい。しかも未来を幻視できる主人公は、自らの人生の不幸な結末を知っており、複数の可能性を見せつけられ、その中でもっとも穏当な、破滅を選択するという地獄の展開。

 作者のフランク・ハーバートは小説家として食っていけなかった時代に政治家の演説草稿とかを書いていた事があった方のようで、つまり政治の裏側を知っており幻想を抱いておらず、その絶望と希望を描いてくれた、と自分は解釈していますけれども。

 そういう物語こそヴィルヌーヴ監督の得意分野ぢゃないかしらん?『メッセージ』なんて悲劇的な未来を幻視しながらも、それを選択していく女性言語学者の物語だったもんなー。『砂漠の救世主』の主人公、そのものとも言える。

 その主人公の苦悩と対照的なのが、彼に陰謀を仕掛けていく面々の俗っぽさで、彼に仕掛けていく陥穽さえも自分たちの俗っぽさを基準にしているところ、ですかねぇ。主人公の統治、選択が苦悩の決断を上で行っているものであるのに対して、陰謀者たちは自らの欲求に基づいて行動していて、その志の高低具合が対照的に感じましたね。前作の遠大な遺伝子操作の陰謀を試みている教団さえも卑俗な感じを受けましたし。

 日本語新訳は初期三部作まで行われる予定だそうなので、次巻で主人公の決断が救いをもたらしてくれる事を願わずにはいられません。