pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

研究者の実情

 というにはアレな本ですが、十二年前の発刊で著者も理学部出身という事は、理系研究者がさらされている現実を、ある面映していると言えるのではないでしょうか?

 

 大学研究者にまつわるSF短編集だというので、実験とか研究競争とか、そういう話かと思ったのですが、それとは毛色が異なりました。『集中と選択』という経済理論優先の法律が、日本の基礎研究を衰退させ崩壊させると言われていますが、施行された前後からもう研究者の方たちには解っていて、その警鐘を鳴らしても選挙権を持っている人たちからすれば「無駄をなくす」という言葉は心地よく、すぐさま経済活動に結び付かない研究など無駄、と切り捨ててしまうのは、自らの周辺にしか想像力が働かない人間一般としては陥りがちな事です。自分も「ダメなような気がするけれど、予算がないというのであれば仕方ないか」と思っていた口なので。

 でも最近、『競争原理』は消費できる人材、人的リソースに恵まれている立場で取りうることであり、それを社員に押し付ける経営者はだいたい無能である。だからブラック企業の上司になりがち、と感じるようになりました。少ない人数で最大限の利益を上げる事が会社として希求すべき目標なのに、安い人件費で人海戦術でなんとかする事から一歩を動けない経営者は、やっぱり無能ですわな。

 「出すか出されるか法」なんて、そんな予算を確保できない無能経営者が研究者に押し付けた無理筋法で、三年の間に、ある一定数引用される(つまり研究結果が評価され、多くの研究者から参照され利用される)論文を出さないと、研究者としての契約を打ち切られる、というもの。

 とはいえこの三十年間、自分だって稼業を進展させる事はできずジリジリと業績を減らし続け、何とかやっています水準でしかない能力なので、破綻させなかった事だけが唯一の手柄とも言えるというのは、手柄なのかね?

 産業構造の変化は解るし、新規産業が自分の稼業の顧客にはなりえない事も理解し、その上で売り上げを伸ばすってのは、同業者の廃業に乗じる「共食い」ぐらいしかないよな、とか、顧客を増やす最も簡単な方法は安売りだけれども、一旦安売りしてしまったら価格を上げる事は至難の業である事も理解できるし、そもそも大量生産、大量消費という形態が見直されている時代に薄利多売というやり方が生き残る手法とは思えない。なにせ流通の絶対量は減少傾向であり、単価切り下げで一時的に顧客数を増やしても、結局お客さんは必要な時に必要なだけしか購入しないので、薄利多売など、ごくまれな状況でしか利益を生み出さない商法になってしまう(うちらの業界的に

 とまぁ本の感想ではなく己の過去を振り返る日記になってしまいましたが、結局のところ信頼できるお客さんに信頼されて、息の長いお付き合いのお客さんを数多くつくっていくしか、商売を続けていく方法論はないよなーっと思っている次第。

 自分も一般的な人間だからなぁ・・・有能とはいえん・・・