pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

こちらも待っていたシリーズ

 このコンビもの小説も何気に待っているのです。はい。

 

 規格外の警部マリアと慇懃無礼な漣という凸凹警察コンビが不可解な事件に挑んでいくシリーズ。何気に架空世界なんですけれどね。今まで文庫化された長編三つを読んでいたのですが(もう一遍は未文庫化なので未読)、これは短編集。最初の一遍は知り合いの空軍士官が主人公ですが(このシリーズの始まりが「ジェリーフィッシュ」という飛行船が航空輸送の一翼を担っていて、それ絡みの事件だったので)、残りは漣やマリアがどうして警官を志す事になったのか。そして最後の一遍はマリアと漣がコンビを組んだ最初の事件、という事になります。

 後味が悪いというか、救いが少ない作品が並んだあと、最後の一遍で光明が見えるというのが、大変自分好みな配列になっておりますので、満足の読了でした。まぁその後、後味が悪い、コンビとしては敗北と言ってもいい『ジェリーフィッシュ』の事件に繋がっていくのですが(あ

 文庫化されていないのが『ヴァンドックは叫ばない』って作品ですかね。それが出るまでにまた『ジェリーフィッシュは凍らない』から再読してみようと思います。マリアと漣の言動、やりとりが楽しくて仕方ないので。うふふふ。

 

 はい。ガラッと変わって中央アジアの古代から中世に活躍したソグド人たちの話です。しかし読了した後、訳者の方のあとがきを読んだら、ソグド人の研究蓄積は日本が先行しているらしいのですけれども、フランスの著者は、それを十分反映していない・・・参考にしていないらしいです。まぁ1980年代までに日本の研究は出そろった感じで、その頃の論文って英語化もされていないのかも。

 なのでソグド人の活動地域の東半分については読んだ事ある話が多かったですね。

 基本的には中央アジアからモンゴル高原にかけて統一的な遊牧民勢力が誕生すると、交易路の安全とかが高まり、中国の絹が西へと運ばれていくというシルクロードですね。面白かったのは漢代、中国王朝が直接交易路を抑えようとした時代に、都市拠点に勤務した軍人たちへの給与が重い銭貨ではなく比較的軽い絹で支払われていたこと。日本でも高額決済は米や絹反物で行われていたので、それですね。んで生活費として商人に払って現金なり生活必需品なりに変えると、商人はそれを西へ運んで高値で売る、と。

 この仕組みが崩れたのは唐代の安史の乱からですかね。この著者によるとソグド人勢力の陰謀論みたくなっちまうのですが(考えすぎだろ)、これを契機に中国勢力が中央アジアから撤退。遊牧民勢力であるウイグルが後を埋めますけれども、今度は西の方でササン朝ペルシアがイスラム勢力により崩壊。このあたりからペルシア人を中心に海上交易路が中国まで伸びて、陸路よりも安い経費で絹が運搬できるようになった事と、イランあたりの絹生産が需要ょ満たし始め、絹価が下落し始めた事が原因みたいです。

 あと近隣のホラズム勢力がソグド人の脅かし、文化的にもイスラム化が始まってソグド人は次第に衰え消えていった、らしいです。

 自分もあんまり知らん(というかどうしても中国史の一部って感じでしか読んだ事なかったので読み流してしまいがち)のですが、シルクロードって遊牧民勢力が安定しないと機能しない交易路なんだよなぁ、とシミジミ思いましたとさ。最後の輝きはモンゴルによるパクス・モンゴリカって感じだしなぁ。そのあたりもどっかで読みたいです。