pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

今日は暑いでござる

 店が鉄筋コンクリートの洞穴なので、ひんやり寒いぐらいなので錯覚していますが、今日の名古屋は夏日みたいな日和です。天気予報を覗いていないので知らないけど。

 暑い暑いといいながら、しかし今夜の映画の為に調達したつまみは赤葡萄酒を意識したものですので、あんまり気にしていません。自宅の買い置きはスー〇ード〇イなので、こいつは真夏に喉を鳴らして飲み干す種類は麦酒ですから、まだまだ出番ぢゃないと個人的には思うデス。

 さて今日は再読したもの。

 

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:伊藤計劃
  • 発売日: 2014/08/08
  • メディア: 文庫
 

  もうこの表紙が主流なんですかね?アタクシの手元にあるのは2012年4月15日発行の十二刷で、表紙は白一色。日本語と英語の題字、著者名があるだけのものです。

 コミックス版が完結したので原作小説を久しぶりに引っ張ってきて読みました。思った以上に内省的な一人称作品で、徹頭徹尾個人的な理由から事件をおっかけています。コミックスでは主人公の目の前で自殺してしまう学生時代の友人が、結構印象つけられているなぁ、と思いましたが、原作小説ではそれ以上に主人公が評価を改めている印象。気付かなかった。

 原作ではあっさり流しているところをコミックスは独自の設定、場面を加えて、より主人公が個人的な目的で暴走している印象を与えています。興味深かったのは終盤で現れる同僚のウーヴェ・ヴォール。原作だと『自傷趣味(物語の中の舞台においての言い回しであって、自殺とかMとかという意味ではない)』仲間として主人公に親近感を持ち、好意的に便宜を計らっているのですが、コミックスだと多くの兵士、部下を指揮し、個人的な事由から組織の力と特権を利用し、最後の場所へ赴こうとする主人公に対して、やや批判的な態度をとったりもします。物語的な印象の深みと言った点では、コミックス版の方が好みです。

 あと、どうしても小説は記述データの話になってしまい、映像的な視覚に訴える事は、もう読者の想像力に委ねるしかないのですが、イラストによって物語るコミックスはこの点有利で(それを言うなら映像と音で表現するアニメは圧倒的、となる)、ラストのモノローグシーンは圧巻でした。小説版のあっさりとした記述に拍子抜けしましたが、たぶんコミックス版やアニメ版を見ていない当時の自分は、こんな映像を脳内で描いていたかも知れませんが。まぁ想像力の欠点は刹那的で、次の瞬間にはあやふやになり、形として残す為には大変な技量が必要なのですが(しかしコミックスやアニメの映像は技術力を持った人の想像力によっている訳で、考えてみると贅沢なのかな)。

 アニメ版はラストシーンの主人公の、たった一言のセリフがどうしても違和感を感じてしまい、再び見ようと言う気持ちになれないのですが、いつか見てみようと思う日がくるのでしょうか。

 あ、再読の感想。なんか新型コロナ・ウイルスで緊急事態宣言下の人々って、この『ハーモニー』の世界を構成する一般的な(良識な)人々に似ている気がするなぁ、と。そして自分は、やっぱひねくれ者だなぁ、なんて感じました。