pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

ねむねむ・・・

 早寝すれば、そんなん解消できるのですがね。はい。ゲームは時間泥棒・・・

 最近は昔からのゲームしかやっていませんから書きませぬ。書くのは読み終わった本のこと。

 

  松岡洋右という人物は『国際連盟脱退』とか『日独伊三国同盟』とか『日ソ中立条約』とか、そういう教科書に出てくる文言と一緒に記憶されている戦前の政治家で、しかも鷹派というイメージがあり、あんまり詳しく知らなかったのですよ。大戦がはじまる前に下野しているので、大戦中の記述には出てこないし。だからアメリカとの開戦を回避しようとしていた、って書いてあると、あれれ?真逆じゃないの?と思いましたね。どちらかというと彼の成し遂げた『成果』は日本がアメリカとの戦争へと向かう道程のような気がしましたから。

 貧困層から自分の能力のみを信じて学習し、留学し、英語能力を生かすために外務省に入り、そして第一次大戦後の経済崩壊で世界経済がグローバルリズムから保護主義に転じ、輸出によって経済的発展を遂げた日本を一転して窮地に立たせます。英米仏の自己中心主義が日本や世界を困窮に追い込んでいると判断した松岡は、どうも英米に対して不信感を持っていたようです。いや、まぁ、翻れば日本だって同じような自分勝手な論理で戦争を始めていくんだけどさ。

 この状況に政党政治家は有効な対策を講じる事ができず(やっても暗殺されるとかね)、暴力装置であるはずの陸軍が外交分野に、短絡的に手を出して紛争をずるずると開始して、挙句に泥縄的な解決方法に、無責任に固執した為に滅亡の坂道を転げ落ちていくという流れになるのですが、不信感を持ちながらアメリカに留学した(どうも差別も受けたらしい)松岡は、だからこそ圧倒的なアメリカを敵に回してはならないと考えていたようです。しかしそれは日本が折れる事を意味せず、交渉によって妥結点を見出し、戦争を回避する為であってアメリカの言いなりになる事ではない、と。

 だからこそ、米英と対等な立場を得る為に外交で活躍する訳ですが、頼みのドイツも五十歩百歩で、まぁ日本を裏切る裏切る。「欧州情勢複雑怪奇」って言う言葉は、人が好過ぎるって意味だなぁ、とか思いますね。結局のところ日本の立場を強化する目的で結んだ同盟や条約はアメリカをして日本の現体制を破滅させる決意を固めさせただけだったという。

 そしてこの破滅の原因が無責任で主観的楽観主義で解決できない紛争を起こし続けた軍、特に陸軍にある事は明確で(本気で日中戦争終結させる気なんかなくて、彼らの行動原理は、これを期に自らの権限、利権を増やそうという、よくあるお役所主義としか思えない)、政治判断ができない『官僚』である軍人が政治の主導権を握ったらどうなるのか、という事がはっきり分かった結末でしたね。

 松岡という人物が洞察力に優れ、このままでは米英と負ける戦争をするしかなくなると、それを回避する為に巨大な官僚機構である軍を向こうに回して必死の論陣を、外相時に張った事は理解します。しかし根本的なところでボタンの掛け違いをしている事に、彼自身も気づいたかどうか。だって交渉相手のアメリカから不信感で見られている外務大臣なんて、意味があるのだろうか?

 しかしまぁ、己の才覚のみで、確たる政治基盤もない(政党政治を否定して無党派だった)男がシビリアンコントロールを試みたというのは、見上げたものだと思いますけれどもね。