pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

小説の感想

 連休中に読み終えた短編小説集はなかなかのボリュームでした。

 

 ここ数年話題になっている中国人作家によるSF巨編『三体』。読みたい読みたいと思っているのですがハードカバーを購入する気はなく、図書館のものはだいたい貸し出し中。文庫化したら読んでやる、と思っていたら短編集が先に文庫化されました。はい。購入してようやく読み終えましたよ。物凄いボリュームだったので。

 この方の作品傾向って、書道に準えると、ぷっとい筆で大胆に大書するって感じ。大胆でヴィジュアル的で、想像しやすいので比較的読みやすい。そして感性が日本人はもちろん、今まで読んできた欧米の作家とは異なる。当たり前ですが。こういった作品をさほど政府が・・・中国共産党がまだ重視していないせいなのか、思ったよりも自由に表現されている印象を受けました。もちろん政治性なんてありませんよ。でもシステム的な非合理、不条理を非難しているような記述は感じられました。まぁどんな政体だろうが思想だろうが現実の運営にそぐわない例はいくらでもある訳で、しわ寄せは弱いところ、末端に寄るものであり、その不条理に対する不満は世界共通だよなぁ、とか思うのですが。

 『西遊記』や『封神演義』を生んだ国の人の作品だよなぁ、と感じるところもあったりしたり。設定的に「いや、そうはならんかもよ」と突っ込みたくなる時もあるけれど、そこがいいとも感じたり、え、そんなラストにしちゃうんだ、という歴史改変も特に理由なしにやるし・・・表題作の『円』のラストが特に、あ、そうなんだ。そうしちゃうんだ。すげえな!!まぁ印象的に中国の人って始皇帝、感性として好きでない感じがあるしな・・・

 色んな意味でダイナミックな作品集でした。

 

 中世アイルランド世界の、大国モアンの王の妹、修道女にして弁護士である人が主人公なのですが、今までこのシリーズではアイルランド教会とローマ・カトリックの対立が焦点になる事が多かったのですが、前作とこの作品あたりから彼女の兄が王を務めるモアン王国の秩序に対する陰謀が多くなります。次巻のあらすじもそんな感じでした。

 当時のアイルランドは五王国が配下の族長、小国王たちを束ね、大王の元に連合している、比較的緩やかな政体であり、現大王は現状維持を表明し五王国最大の王国モアンもそれを支持しています。まぁ平和秩序を維持する側ですね。それに挑戦する側はより中央集権的な王制を指向し、どうやらローマ・カトリック派も宗教界の覇権を握る為にそれに同調しようとしているようです。

 しっかしフィデルマって人、敵に囲まれるホットスタートになりがちで、読んでいるとこの人自身も敵を作りやすいし、行動力と無謀の狭間の行動をしがちで窮地に陥りがち・・・まぁそういう冒険要素が読者の興味を引き付けて離さないところなんでしょうね。護身術を持っていると言ってもアラサーの美貌の女性という設定でしょ?もうちょっと慎重になっても・・・って言うのもヤボな話かー。

 そうぶつぶつ言いながらシリーズを追っかけるのをやめないワタクシですしおすし。