pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

戦災被害者

 日中戦争に関する網羅的な研究をまだ読んだ事がなくて、断片的にも知りたいと思って借りました。

 

 間違いなく日中戦争最大の被害者は戦地に住んでいた人々で、戦争の推移とともにどれだけ広大な地域に被害が及び、人々が故郷を離れたのか、そしてそういう被災民に対して日中双方の当局がどんな対策をとったのか、が書かれています。

 ぶっちゃけて言えば、日中戦争は日本が安易な(それこそ今回のロシアのウクライナ侵攻ぐらい安易な)気持ちで中国に侵攻しなければ起こらなかった可能性が高い戦争で、中途半端な気持ちで攻め込んでいるせいか、時間の経過とともに軍部の自制心は末端から溶けてなくなっていき、ほぼほぼ火付け強盗という戦争の基本形を実施したように見えます。

 日本軍に殺されたり奪われたくなかったら一般の庶民は逃げる他なく、そして逃げる資金すらない貧しい人々だけが町に残るって感じ。日本側の目的は華北地域に中国国民党政府と満州国の緩衝地域、つまり傀儡国家をつくる事であったので、人々が住んでいるてい、つまり曲がりなりにも治安を保とうと試みますが、『点と線の占領域』と言われたとおり、集落の有力者を抱き込む事ができたところはともかく、そうでないところに住んでいた人が帰ってくる事はなく、帰ってきても補助金目当てみたいなもので、とてもぢゃないけど傀儡国家をつくるまでにはいかない。

 中国国民党政府もね、黄河の堤防を決壊させるとか、国土焦土作戦とか、日本軍の侵攻を遅滞させる為に住民被害を度外視した事をやっていますから、それによって避難民、そして飢饉が発生する訳ですが、追い打ちをかけているのが日本軍による略奪やら性暴力やら殺戮やらですからね。甘い見通しで戦争を開始し、作戦を立て、行き詰まり、更なる予算を獲得する為に、戦略的な目的達成も乏しい作戦を立案、強行していくという・・・ここでも日本軍の無責任ぶりというか、組織、自らの立場、名誉とかしか考えない自己中心的なものの考え方とかが浮き彫りになります。

 戦時中の事を真面目に知るほどに思う事は、靖国神社もバカな事をしたもんだな、と。こんな無責任で国を破滅に導いた連中を『神』と祀ってしまって、国家神道に属するのに昭和天皇が参拝を拒否するってどんだけだよ。

 右巻きの政治家が終戦の日になると参拝するだのしないだのと毎年話題になりますが、彼らが参拝する理由の大半は、国を滅亡を導いた連中を尊敬しているというよりも、その連中を拝む格好をして票につなげたいと思うからで、この国には国を滅亡に導いた連中の姿を見ずに拝んでいる人たちとか、一番怖いなのは、その事実を知っていても拝む人々がいて、その連中が国を動かす力を持っていると認識されている事なんだよなぁ・・・

 この国には無責任に中二病の赴くままに喚き散らして、人が死ぬのもキニシナイ不感症な人々がいるって事なんだよなぁ。怖いなぁ。

 いずれにせよ、戦争は人災であり、方法論として選択してはならないこと。ただし殴りかかられたら、その限りではないことってぐらいですかね。