pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

いきなり重い奴

 本の重さです。内容もアレですが。

 

 共和制ローマ末期の法律制定?可決過程から、共和制から帝政への移行を読み解こうという論文で、外国語の日本語表記が難しいし、通説で使っている表記が実は違うとか言うのはよくありまして、この本の人名表記も自分が知っているのと微妙に異なる場合があるから、その度に読む手が止まりました。まぁそんなもんです。

 今までの話だと共和制末期は個人的な実力者が自分の思い通りの法案を通す際、元老院での反対が強いと、民会に訴えて法案を成立させる傾向にある、とあったのですが(だいたい元老院階級の利益を損ねる法案が多いから)、しかし平民会も元老院が反対していると知ると賛成しない傾向があるようです。

 当時の元老院の議事録はカエサルが速記させ公表させるようになったと言えども、今みたいに中継で流されている訳でもないので、事実上密室の会議に等しく、会議に出席している者が外部の人間に話すことが最大の情報源みたいな感じ。なので会議内容を外部に流出しないよう、あるいは自分たちに都合がいいよう装う、演出するのが重要らしいです。民会は自分たちの階級の利益になるとしても、元老院という諮問機関が反対する場合は賛成しないようで、これは元老院というものが人々にとっては『経験豊かな実績を積んだ人々の集まり』で、その人たちが反対するなら、この法案は良いものではないのでは?と思えてしまうからのようです。自分に直接利益にならない法案ならなおの事、そういう疑問故に反対する、みたいな。

 なので帝政が成立してもアウグストゥス元老院を立てた、というのは体面を慮る、ばかりでなく、実際に立法手続きとして元老院の支持がないと不都合である、という共和制末期からの制度を引きずっているからとも言えるわけで、これはアウグストゥスの『天才』というよりも調整型指導者としての能力が傑出していたから、という方が正しい気もします。この辺は推測なので、今後研究が進展するといいですねぇ。

 

 ディアスポラ・・・ユダヤ商人やアルメニア商人が果たした役割が書いてあると思ったので読んでみました。経済史って日本だとあんまり一般的ではなくて、西洋経済史となると、どうしても産業革命を起こしたイギリス中心に語られてしまうそうで、それ以外の研究を深化させた功労者の一人が著者だそうです。役者はきっとこれをご自分の授業の教科書として使いたいのだろうと、そんな内容。商売っていうのは個人的な信用と、そのネットワーク化であるよなぁ、と思う事が多々あり、それを過去の事例から論証してくれた、みたいなところがあります。十八世紀までは個人の情報網が公的なそれに勝っていた、というか勝っている人でないと商業的に成功しないよね。

 なんか集金能力が衰えた(公的)マスコミの分析、発信能力が劣っていくけれど、個人的に情報収集、分析能力のある人のSNSを使った発信能力の方が信用できる場面があるって、十八世紀までの状況に似てきている気がする。

 あとユダヤ人は地中海から大西洋に展開して商売を行い、アルメニア人は中東からインドにかけて内陸でネットワークを構築して商売をしていたと。現代はその大西洋をまたいだユダヤ人が『超大国アメリカのロビー勢力に成長しているから、ユダヤ人国家イスラエルアメリカの強力な援護を得ているけれども、アルメニア人はかつてオスマン帝国で影響力があったけど、帝国の崩壊とトルコ人による迫害(虐殺)によってその勢力を減少させ、それがアルメニアという国家が『非力な』小国である現状に結び付いているのかも、と推測、妄想したりします。

 自分の頭ではそれぐらいしか解らんかった。あう。