そろそろ読み終わりストックも尽きます。今夜『小牧・長久手合戦』を読了できなければ、明日のネタに困りますが、まぁ今日は今日の事に集中しよう。
日記の表題は、読後の感想を一言で言うと、ですかね。ちなみに『こいつ』とは上杉謙信くんの事です(あ
主に越後方面から見た戦国期関東の通史という感じですが、上杉謙信を『義将』『軍神』視する向きに対して、生身の謙信はこんな人なんですよ、という事を書いている本・・・なのである意味、『著者の本音』とも言える。
越後上杉氏は室町期から関東管領を援護する役割を京都の将軍家より期待されていて、その後継者とも言うべき越後府内長尾氏にも、その役割が求められたと。異なったのは、それまでは内紛調停とか援軍で済んでいたのが没落してしまった山内上杉家の再興を求められたって事ですかね。
とは言え、越後国内の覇権を家格ではなく軍事的成果で取っていた府内長尾家としては、幕府からも朝廷からも、もらえる権威は全てまとわなくてはならず、上位権力による仲裁を求めていた越後国衆も、自分たちの利益の甚だしい侵害にならない限りは上意に従わなければならず、求められた山内上杉家再興=関東旧秩序再建の為、出兵、越山したと。
んで関東の方はと言えば、残っている上杉家与党以外からすれば寝耳に水、みたいなもので、そして対立古河公方の藤氏あたりも喜んでいるけど、それ以外は「俺らも集まるの?」って感じ。つまりいい迷惑って思っているなぁ、と。ただ反北条家、北条家と利害が対立している面々からすれば都合のいい援軍キター!!ってなもんなので積極的に利用しますけど。
謙信の方も「小田原北条家が台無しにした旧秩序を再建」した事で役割完了って越後、北信濃、越中に集中したかったけど、別に再建した連中の求心力が回復している訳でもなく、越後勢がいなくなれば北条とその輿同勢力が反撃に出る訳で、そうなるとひとたまりもない。なので例によって「助けて、謙信えもん~」となる訳ですが、謙信だってお手伝い戦みたいな感覚が抜けないから、関東秩序を自らの武力によって打ち立てるなら本拠を関東に移すべきだけど、そんなビジョンがある訳でなく、関東管領を襲名しても、あくまでも越後国主が本来の立場であるし、でも「味方」を見捨てたら世論的に立場が悪くなるし、ぶうぶう文句を言いながら、負け惜しみを言いながら、関東へ出兵を繰り返すというご苦労な話に。
しかしそういう話も謙信が勝ち続けている間の話。臼井城(だったかな)攻撃に失敗し、また駿甲相同盟破綻後に北条と同盟を組んだところから、「も、謙信抜きでも戦えるようになろうぜ、俺ら」という動きが加速。そして北条相手にも不誠実な対応を繰り返し(武田とも和睦を結ぶし、北信濃よりも越中とか東関東とか自家の利益を優先させるし)、何というかね、室町秩序にのっとって働くも、それが時代遅れになっている事を謙信自身も気づいていくも、それでもなかなかそれを捨てられないってとこがね。
そしてその書状にぶちぶちぶちぶち愚痴を書いたりするんですよ。
頼りになるのかならないのか判らん上に、上から目線で愚痴を言うて、うぜぇな、こいつ。というのが感想でした。北条びいきな人間からすると、謙信の動きがなかったから、関東は北条覇権の平穏がきたかも知れんのにねぇ、とか思ったりするので、余計に「うぜぇ」とか思っちゃうとこがね。
謙信君の気持ちも判るけどね・・・