pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

忘れる前に

 日記を書くものですが、とっとと次の話題に移りたいが為に書いてしまうという意識もあるもので、今回はそんな感じ。

 

  普段読みなれないジャンルですが、読み飛ばす事も許されないよなぁ、と思ったので読了までに時間がかかりました。著者によれば憲法はその国の体制に直結するという事なので、この本を読むと大日本帝国憲法ができるまで、運営された五十年、敗戦後、日本国憲法が成立した頃まで、日本の近代政治体制をたどる物語、という事になります。

 読むことを決めたのは、Twitterとかで右巻きの人々が大日本帝国憲法への回帰を無邪気に唱え、日本国憲法を否定しているものですから、自分としては「日本国憲法の方がマシ」と考えているけれども、その理由をちゃんと考えた事がなかったな、と思ったので読んでみた次第。

 大日本帝国憲法を「サムライがつくった憲法」と右巻きの人は言うのですが、彼らは戦争権の有無だけを問題にしている感じですけれけども、あながち間違いではなく、明治維新期の欧米の知識を備えた者と言えば、留学経験があるものも含めて圧倒的にかつての武士、士族が多い。大日本帝国憲法を作った伊藤博文を始めとする人々も、自由主義や民主制を主張した人々も士族がほとんどでした。だからまぁ最初の自由主義者江戸幕府期までの特権(家禄による一定の収入を保証されていた)を奪われ、再就職も商売や農耕も不慣れであり、警官を含めた役人以外に選択肢のない士族たちが、自らの生きる権利を主張する者たちだったと捉えるのもあながち間違いではなく、政府にしてみれば、乏しい財源を更に奪われるような主張は容認できないし、できるだけ早く近代国家の体裁を整える為にも(そうでもなくても試行錯誤の繰り返しで手探り状態。技術的な事はともかく、政体に関しては十年以上ひねくり回した挙句に決まったようです)議会制民主主義よりも君主主義に元ずくトップダウン憲法が望ましかった、という事です。

 なので天皇からの信任以外に内閣総理大臣が他の大臣に匹敵する立場にはなく(組閣の権利は総理大臣にあるけれども、その大臣を任命する権利は天皇にしかない)、現代の議院内閣制の総理大臣に比べると相対的に権限が弱い。

 また致命的であったのは統帥権の問題。これはそもそもの想定は戦地における総司令官の権限を守るものであり、軍政については陸海軍大臣も入った内閣が主導する筈でした。これは当然の事で、日々状況の変わる戦場の事柄を後方の政府がいちいち口出ししていては戦う事はできないからです。その為に天皇が管轄するという事にしていたのですが、これを拡大解釈したのが第一次大戦後の軍縮時代。自らの権限を侵されたと考えた軍部が当時野党であった政友会と組み、軍政までも統帥権に属すると主張したところから、ついには軍部が恫喝、テロをちらつかせて(あるいは実際に青年将校たちが暴走してテロを行い)、議会制民主主義的手法が主導権を握りつつあった時代を握りつぶしました。武器持った奴の脅しに屈しない人間なんて、滅多にいない。だから自分は武器を携帯して交渉する人間を信用しないのですが(威嚇、恫喝で自分の思うままの返事を要求するなど、交渉ではない事をしてきやがるから

 それが大日本帝国憲法体制の崩壊でした。威嚇、恫喝で思うままに法律も政治もいいように操っているんですから、法治なんて関係ないですよね。つまり大日本帝国憲法というものは、そういう弱点を抱えた存在であったと。

 んで一般に交戦権が認められない日本国憲法なのですが、どうも自前の軍事力を持たないのに独立が保証される前提として、高次の国際的な平和への意思とかなんとか書いていて、どうもアメリカ主導の国際連合を想定しているみたいです。崩壊した国際連盟とは異なり、多国籍の国連軍を組織して紛争を調停する機能を持っているので。しかし周知のとおり常任理事国の拒否権により機能不全をたびたび起こすのが国連による安全保障です。つまり前提条件が満たされていない。もちろん建前上そんな事を公言する人はいませんが、しかし常任理事国の利害が衝突すれば機能不全に陥るものに独立保証など求められる筈もないので、理屈として現行憲法下でも『独立を担保する自衛としての軍事力』を保持する事は認められる、と考えられる訳です。独立を侵害する対象に交戦権を主張しても憲法的に問題はない、という事。

 もちろんこれが政治的に認められるのか、というと別の問題なのですが。

 あ、不愉快な話題はもう一つの本でした。それは明日以降に。

 思いついて日本国憲法第九条の条文を改めて確認すると独立保証は何も書いて無くて、国の交戦権を認めないと明記していますね。第一項の武力による紛争解決を放棄、というのは現在まで政府によって守られています(北方領土尖閣諸島竹島において自衛隊が出動した事例は公にはない筈)。国の安全について第九条は何も書いていない。

 wikiで眺めただけでも長く色々論議されていて、今更自分みたいな素人があれこれさかしらに何か言う余地もなさげですが、流し読んでみて思ったのが「他の国にも認められている事なんだから、うちにもある」みたいな解釈しているように感じられましたね。

 お、気が付いたら目途の二倍の分量になっていた。