pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

これはいい本

 去年から気になっていたのですよね。だから図書館で見つけた時は小躍りしました(してない

 

 『鎌倉殿の13人』の前には弟実朝の再評価がありましたけど、お兄ちゃんの再評価も始まったって感じです。ちなみに著者の方からの言葉では、企画は大河ドラマの前からあったそうです。んで、出たのは家康がどうかしちゃう頃という・・・おいおい(おいおい

 まず頼家=暗君の評価は『吾妻鏡』の北条氏アゲアゲ表記の為で、つまり北条氏権力奪取の原因としてつくられたって感じ。も、最近は暗君説のある人って後継政権にとって不都合な人だから人為的に貶められている可能性大って感じになりましたね。頼家がやっている事は基本的には頼朝時代の継承であり、それを悉く悪い方に取られていること。安達景盛妾を奪うという話も、この景盛という人物が『吾妻鏡』において敵役、憎まれ役を配される事が多いので注意すべき、とか、色々注意喚起していますね。

 頼家外戚となった比企氏の事も詳しく論述していて解りやすいです。

 頼家にとって悲劇だったのは急の病で危篤状態になり、後継者問題の時に彼自身の意識がなかった、あるいは彼を除外して話し合い、陰謀が進行した事。一番大きかったのは頼朝生前はその他大勢に近かった北条氏が『頼家外祖父』として発言力が増しており、頼家を失い、比企氏を母に持つ頼家息子一幡が鎌倉殿になれば、その外祖父としての地位を失うということ。自力救済世界の住人である北条氏とその与党が、比企氏が擁立する一幡ではなく、北条政子を母とする実朝擁立に動いた為に起こったのが比企氏の乱で、北条氏のクーデターが実態というのは、大変解りやすかったですね。

 政子はこのクーデターに関しては蚊帳の外だったのではないか?とも思いますけど。一連の事件で頼家が亡くなった後、頼家遺児を保護育成したのは政子でしたし、彼らの身の振り方にも気を使っています。また頼家の血統というものが摂家将軍時代にも権威であり鎌倉の心の支えになっていた事が解りました。頼家遺児で最後に残った竹御所が男子死産の後亡くなると、京で勤務していた御家人たちまで『いざ鎌倉』と下ってしまい葬儀に参加。京の治安維持が危ぶまれるとか。同時期に後堀河上皇が亡くなっているらしいけど、御家人たちにとっては「そんな事」より竹御所が亡くなった方が大事件であったという事ですね。

 頼朝の血統。頼家の遺児というものの威力ってのを実感できますね・・・公暁くんが勘違いするのも無理ないな・・・