pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

ヨカッタ(小並

 クリス・パインという俳優さんの顔は良く見るし、イメージとして好青年役が多いのですが、これはちょろりと違いましたね。敗残者ぢゃないのに敗残者みたいな役。

 

 主人公は家庭持ちの陸軍特殊部隊軍曹。しかし何度かの実戦で膝を負傷しており、治療をしながら復帰を目指していたけれども、新しい上官に変わったところで血液中薬物検査が厳しく適用される様になり、治療薬物の血中濃度が問題視され、年金、退職金なしの除隊扱いに。たぶん療養生活が長くて給金もカットされていたらしく、借金生活の彼にはキツい処置。生まれつき車いす生活の息子を持つ元上官に相談し(つまり元上官も息子の治療費の為、大金が必要)、自身も所属する民間軍事会社を紹介されます。

 最初はテロリストの協力する科学者の研究データを強奪する任務であったのに・・・気が付いたら四人チームが二人になり、負傷し、自分は古傷が悪化し、異国で孤立状態に。救援を会社に求めるも、何かきな臭さを感じ取って警戒していたら案の定、仲間であるはずの社員にまで攻撃される始末。

 ここまで他の作品だと組織ごと悪玉~って展開になって主人公のスリルに満ちながらも痛快アクションを交えた逃避行となるのですが、この作品はちょいと違う。追手も元米軍の精鋭で、瀕死の状態で会話したのは海兵隊の偵察部隊に属していた。幼い子供のいる父親でもあり、最初は救援という命令だったのに、主人公を発見した途端に抹殺に変更になり、命令に従う軍人、兵士としての習性で主人公を攻撃する事に。

 写真を返してくれ。すまない。そう言いながら死んでいきます。

 彼を襲うのも元米軍兵士なら、助けてくれるのも元米軍兵士。まるで米軍兵士の吹き溜まりみたい。この映画で感じた事は、健康保険制度のある日本人でヨカッタ、が第一。負傷の治療費とかで家庭生活に借金を背負うって、日本ではどうなんだろう?特殊部隊ってそんなに保証されないものなんですかね?

 もう一つは、これ一作目の『ランボー』の系譜を引いているなぁと。帰還兵が社会から排除される問題を取り扱ったのが一作目『ランボー』でしたが、この作品から除隊した兵士の再就職先がコネがなければ民間軍事会社や警備会社に限られていること。極端な例かも知れないけれども特殊部隊の技能を生かすとすれば、同じような危険な職場に限られており、そして危険な現場は法律の外にある、みたいな。

 元兵士って死に際のセリフが特徴的なものが多くて、覚えているものでマンガ『エリア88』に登場した主人公を裏切る元戦闘機パイロットの傭兵が、歩兵として殺される時、「どうせなら空で死にたかっぜ」と呟くのですが、この映画だと歩兵出身の傭兵が「ブーツを履いて死にたかった」みたいな事を言うんですよ。歩兵にとってブーツは友達ですが(ひたすら歩くから)そういうセリフが出てくるものなんだなぁ、と思いました。

 そしてだいたいそういうセリフを言うのは敵役なんですよね。言った後、罵られたり、無言で止めを刺されたり。

 先日に続いて、有名ぢゃないけど佳作な映画作品に出合えたなぁ、と思いました。