pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

天正壬午の乱と賤ケ岳の戦い

 この大きな事件を凝縮して一回に、お市に焦点を当てて語られた回でしたね、昨夜の『ど家』は。誇り高き織田家の娘、というくだり、黒田基樹さんの説によっているかなぁ、と。当時の上流階層の女性は婚家と実家の政治的同盟、絆を維持する事を求められていた訳で、しかしお市は浅井家、柴田家と婚家を二度も滅亡させてしまった。結果的に求められた役割を果たす事ができず「口惜しや」という気持ちを持っていた訳で、浅井家滅亡の時に生き延びたのは、幼い娘たちの養育の為で、柴田家滅亡時に婚家と運命を共にしたのは娘たちを秀吉に託す政治的妥協が成立したからだといいます。

 そこに家康との思い出とか、母の思いに結局答えてくれなかった家康への恨みを茶々が背負うとか、いやぁ、いいシナリオですね(地獄

 あとは『秀吉』以来、こんなに重要人物扱いされた羽柴秀長は初めてではないだろうかと、少し感動しています。はい。だって冒頭の登場俳優さん紹介で後ろから二番目って、凄いなぁ(感心するところが他の人と微妙に異なっている

 そしてこの方の著作は大河ドラマと同じように気持ちで接するのが安全とか思っていたりする。

 

 塩野七生さんは文庫化に関して、薄く携帯が便利なようにデザインされる事を望んでいたと思っていたのですが、まぁこのご時世、文庫本と言えども携帯する人は少ないので、そういう事を意識しないデザインになったのかなぁ、と。

 この『ギリシア人の物語』が塩野さんの最期の歴史著作(小説)シリーズとなる訳ですが、司馬遼太郎さん型の著作をする方なので、内容はくれぐれも小説という認識で読まなければあかんと。かつてご本人は悪戯心から何でしょうが架空の資料を匂わせて読者サイドを惑わせたという事があったので、あくまで『物語』として楽しみ、全体の流れを把握できる、という視点で読むべきです。

 アタクシなんかは、この『ギリシア人の物語』でようやく古典ギリシア史の流れを把握した次第ですし、詳しい事は研究者の手になるものを探して読むかいな、と。

 あと前にハードカバー版を読んだ時にも書いたけど、この方、アテネ人が好きだよなぁ。というか『悪賢い男』が好きなんですよね。そしてスパルタ人、その中でも監督官と言われる一年任期の一兵卒階級から選出される猜疑心の強い先例墨守の連中がやった事が大嫌い。まぁ気持ちは分かりますがね。この連中の策動さえなければ・・・という感じで書かれていますから。

 でも個人的には、いつかどこかで塩野さんの物語を否定的に論証する研究結果が出てきたら面白いのに、とも思っています。ローマ帝国の軍人皇帝時代の研究で目から鱗というか、何故『ローマ文明』の担い手が庶民から遊離し滅亡していったのかという仮説が面白く納得いきましたので。塩野さんは『ローマ文明』の担い手が好きだから、負の部分は知っていても書いていない可能性があるもんね。

 一巻はペルシア戦争でした。二巻はアテネの繁栄と没落を描くペロポネソス戦争がメインです。今月末の発売ですね。楽しみです。