pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

戦争の全て

 庶民レベルにおける『戦争』で起こりうる事を、だいたい描いている気がします。どちらかというと人間関係レベルなんですが。

 

銃座のウルナ 7 (ビームコミックス)

銃座のウルナ 7 (ビームコミックス)

 

  戦争を行っている列強国の辺境で、資源確保の為に民族浄化が行われているのですが、その作戦に従事する兵士に、対象となる少数民族が人間に見えなくなる絡繰を装備させ、躊躇なく殺戮をさせていく。その中で狙撃の名手として主人公がいます。苛烈な殲滅戦の中で戦友を亡くし、そして図らずも『悪意』ある絡繰の存在を知り、主人公は民族浄化作戦から主戦線へと転属。戦争は継続中ですが兵役を終えるまでに戦功を立て、『英雄』(女性だから英雌?)と称えられるのですが、戦場での現実、殲滅戦の事実がのしかかります。

 そんな中、彼女は恋に落ちるのですが、相手は、彼女の部隊が殲滅戦を行った少数民族のたった一人の生き残りでした。つまり彼女と彼女の国の人々全てを憎悪している・・・しかし彼自身もそれに気づいたのは彼女と恋に落ちた後。二人は苦しみ、愛憎を抱きながら、結局結婚するのですが、彼の憎悪の狂気は彼自身を蝕み、ついには無差別殺人を犯して、彼女自身の狙撃によって命を絶たれます(確か

 これはそんな物語の最終巻なのですが、彼女を英雄と称え、厭戦気分を払拭しようとする軍や共同体に怒りを抱き、彼の様に無差別殺人の末の自爆死を夢想しますが、しかしお腹に宿した彼との子の為なのか、それとも彼女の『愛国心』からなのか、思いとどまります。

 そして終戦。科学レベルは第一次大戦前後に見えるのですが、総力戦には至らず領土割譲、賠償金、戦争犯罪の処罰・・・と言った戦後処理がされています。彼女は双子を産み落としますが、自身が母親であるとは言わず、知人の『偽装夫婦』(これもまた面倒くさくて切ないエピソードですが)に預けて教育者として接する道を選びます。真実を知れば、父の民族を理不尽に皆殺しにした事実を憎み呪うかも知れない。逆に民族の痕跡を探し出し、研究し、後世に残すかも知れない。

 終戦の混乱は彼女が守ると決めた美しい、しかし閉鎖的な故郷にも押し寄せてこようとしています。それでも人々は生きる・・・みたいなラストでした。

 戦争未亡人とか、よそ者に対する差別や侮蔑。容赦ない戦場。そんな描写がいたるところに、詩情豊かに表現されていて、読むのが辛いのですが、たぶん本棚から自分は、絶対に外さない物語になるでしょう。

 でも・・・これってSFなのかな?うーむ・・・