昨夜もポワロのドラマ見ていましたが、寝オチしそうでヤバかったです。ヤバーい。
自分の持っているものと違うけど、いいや。今回の話は昨日日記に書いた『五匹の子豚』に比べると純然たるサスペンス・ミステリーです。最後の犯人とポワロのやりとりとか、動機が金銭欲まみれとか、そしてヒロインは・・・なところまで、王道のドラマって感じです。そういえば丁度戦間期のイングランドが舞台なので、(ポワロもののイメージはやはりその時代ですが)今日読み終えた評伝とは同時代、というべきですかな。
戦間期は不遇でしたね。第一次大戦で失敗に終わったガリポリ作戦の責任を一身に受けてしまった感じで、「できる」と思われているけれども、同時に「ヤバい」とも思われていたようです。
父親がマールバラ公爵家の次男で、爵位はありませんが貴族階級出身と言えます。父親が四十代で亡くなっているので、早く世に出て、早く名を成して、早く財を手に入れて、という野心一杯の若者だったようです。一応士官学校は出ているけれども騎兵は装備が自腹だったようなので、手元不如意につき退役しています。んが、戦争が起これば予備役将校として戦地に赴き、出版社と従軍記者契約を結んで、軍上層部が鼻白むような事も書き送ったようです。インドで士官生活していた時期に独学で歴史やら文章力やら勉強したり、培ったりしていたようで、ボーア戦争の捕虜収容所脱走騒ぎを手記にしたのが売れて、そこから政治家になったようです。
三十代から大臣クラスを務めたりしていますが、第一次大戦で主導したガリポリ作戦に失敗して閑職へ。その後はナチス・ドイツによって戦争の危機が高まるまで不遇だったようです。
英国は第一次大戦の泥沼の消耗戦の悪夢がぬぐえず(フランスも)、ドイツの欧州覇権を認める事で戦争を回避しようとする保守党が主導権を握っていましたが、ヒトラーを調子づかせてしまい、結局戦時体制に。その時、保守党に属する政治家の中でチャーチル以上に行政、軍事の経験を積み、尚且つそのナチスへの好戦的な態度で野党勢力からも支持される人物はいませんでした。
第二次大戦では政治主導者として英国を戦勝まで、そしてその結末が英国が大国から陥落するところまで導くことになります。まぁ統治システムが既に老朽化してしまい、英国の覇権はとうに失われていたのですけれども。
チャーチル自身は中道を意識し、庶民の権利を認めて社会保障制度をある程度充実させる事には熱心でした。また目先の仕事が片付かないと気が済まない質で、待つという事を知らず、つまりトラブルにどぅおんどぅおん対処しなければならない非常時にはうってつけの政治家でした。
イメージとして「ジョン・ブル」の典型と見なされてしまいますが、実際の英国紳士はこんなに押し出しが強くないようです。もっと隠微な感じがしますね。
英国では現代史の『偉人』の一人ですが、今の日本では過去の人みたいな感じで、あんまり評伝も最近のものはないようです。2015年に機密文書も公開されて、これから研究が深化されていく人物だと思うので、日本語化されないのは惜しいですよね。