pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

読了。現代史編

 と言ってもJFKの評伝を読んでいる最中なので、今回借りた本の中で読み終わったものに限って、なのですが。

 

 ウィンストン・チャーチルを知っている人は多いでしょう。イギリス首相として第二次大戦を戦い抜いた『不屈』の男として有名なのですが、彼とともに副首相として政府を支え、ナチス・ドイツ降伏後の総選挙でチャーチル率いる保守党を破り、政権与党となった労働党の当主であるアトリーの名前を知っている人って、かなり第二次大戦に詳しい人でしょうね。自分も名前は知っているけどって人でした。

 今でこそイギリス労働党って保守党と並んで二大政党の一角を占め、政権交代もスムーズに行えていますが、この人がいなかったら日本の民主党みたく空中分解をしてしまっていたと思えるほど重要な人物。それだけでなく、今日の社会福祉制度のほとんどは彼と彼の与党である労働党によってつくられたものであり、資本主義国の社会福祉のスタンダードを築いたと言っても過言ではない。日本の医療保険制度も参考にしている筈。

 こう書くとすげえ偉人か?となるのですが実はこの人、カリスマリーダータイプではないです。というか労働党1920年代にカリスマ型リーダーの『裏切り』で手ひどい敗北を喫していて、そういうタイプを忌避していた時代でした。『他に人がいないから』リーダーに選ばれる人で、議長タイプ、つまり皆の意見を聞いて、自分の意見を押し通すことなく、全体の意見を取りまとめていくタイプ。しかし自分の意見は必ず入れるし、あきらめる場合は政治的利益を優先するって時。つまりバランス調整型の政治家ですね。もちろん党内には反対派が存在しますけれども、それを無力化、非力化する手腕もなければリーダー足りえない。

 労働者の権利を守る事を考えているけれども教条的リベラルではないし、核保有を決定したのは彼の政権時ですが、当時植民地防衛に世界中に軍隊を展開していたイギリスですが、第二次大戦後の疲弊で昔日の面影はなく、超大国になった米ソに伍して安全保障を確保する為には核兵器を持った方が経済的、との判断があった為です。兵士たちの帰還を進めなければならなかったし、植民地を独立させて英連邦を形成するというソフトランディングも考えていました。

 あとイギリスの三枚舌が現在のパレスチナ情勢の原因なんですけど、強引にユダヤ人入植を勧めたのはユダヤ人ロビー圧力のもと、アメリカがやらかした事らしく、現地の治安を担っていたイギリスが嫌だって言ったのに、トルーマン大統領はユダヤ人十万人入植を強要したという。そんな事をしたらパレスチナ人とユダヤ人が狭い土地を巡って血で血を洗う争いになる事は容易に想像できるだろうに・・・

 ま、白人系アメリカ人にとって他人種の事はそういう想像力も働かないものなんでしょうけど、それが3.11とかの遠因になっていると思うと因果応報って感じるなぁ。

 あれ?イギリス首相の本の事を書いていた筈なのに、あれれ?

 最終的にアトリーは唯一無二の労働党党首のイメージになっていました。彼が政界引退をした時、これで労働党はバラバラになるとも言われていましたけれども、党としての組織とかビジョンは確立しており、現在も二大政党の一角を占めているという。

 ほんとこういう人がいるかいないかで、組織が存続するかしないかが別れるのだろうなぁ、と思いました。