pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

一向一揆入門

 本屋の本棚を眺めていると、買う予定にない本を購入する時があります。これは、そんな感じで入手しました。

 

 そういえばあんまり戦国時代の本願寺視点の研究って、あんまり触れた事ないなぁ、と思いついてしまったので手に取ってしまいました。戦国期本願寺宗主が、蓮如、実如、証如、顕如の四代だって事も知らなかったのです。もう一代あるかなーっと思っていましたが、ちょろりと見た事のある円如という方は若死にされたようで宗主にはなっていない。

 本願寺派浄土真宗の中では蓮如が出るまで多数派ではなかったようで(親鸞の娘の系統だったそうなので、そのあたりが原因ですかね?)、現世利益肯定が室町戦国期に活発になった土一揆とかと結びついた感じ・・・なんですかね?

 一般的イメージだと宗教的情熱を熱狂的に体現している、みたいな感じなんでしょうけれども、記録に残っている限り、そういう狂信的な何かではなく、宗主の命令でも一揆構成員の利益と合致しないと動かなかったり、反対の行動をとったりと様々です。

 本願寺側も、蓮如の代では動員は一度だけ、それも細川政元の要請という世俗権力との関係を重んじたが為にやっています。宗教闘争っぽいのは証如の代の法華一揆山科本願寺を攻撃した時の動員ですけれども、それでも法華宗側は本願寺の殲滅は考えていないし、一向一揆でも直接的な利害が関わっていないので参戦しなかった地域もあります。

 最も有名な石山合戦、つまり信長との戦争も最初は反足利義昭勢力からの調略に応じた、やっぱり政治要求から参戦した模様。本願寺が中立と信じていた信長は仰天していますが、まぁ畿内勢力の動向はなかなか複雑怪奇ですね。

 信長はだいたい殲滅戦を行う場合、自らの面目が失墜した事を挽回する場合にやるかなーっと思ったりするのですが、長島一向一揆との戦いが和睦したと思ったら騙し討ちされたりとか、戦いの中で彼の兄弟、一族が多数戦死しているとか、「鬱憤を散じ」たくなる経緯があったから、とも言えます。ただしやられた方はたまったものではなく、織田家領域支配を受け入れるのに時間が必要、なんて事態にも。

 ただし間違えてはいけないのは、宗主のスローガンは敵対者を『法敵』と位置付けますが、実際には利害対立という生臭い問題でして、妥協が成立しない問題ではない、という事。事実、本願寺も大坂退去という全面降伏という結果に終わりますけれども、宗派としては存続するし、世俗権力に協力する宗教団体として織豊、江戸時代を過ごす事になります。

 外側から見ると、苦戦した記憶から長年『ヤバい連中』と支配階級から思われていたようです。前田藩も特に一揆勢力が目立った加賀北部二郡の支配は警戒感を持って取り組んでいました。内側から見れば成熟しきれなかった戦国大名権力と思える場面があり(一揆はどこまでも在地の地縁、血縁に基づく利益団体であり、遠隔地の本願寺が統制を取ろうと思っても齟齬が生じる)、そのあたりが『信長の野望』とかで武将(?)が低い能力設定になったりするのかなーっと思ったりしたり。

 次のステップに行くには、何を読めばいいのかな?