pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

ローマは『男尊女卑』

 『修道女フィデルマ』シリーズを読んでいると、主人公が若い美貌の修道女という事もあって、だいたい初手で侮られるのですけれども、このお話では特にそんな感じです。

 

 前巻のブリテン島での宗教会議中にカンタペリー大司教が死没した為、後任の大司教が選出され、それをローマ教皇に聖別・・・任命してもらう手続きをしなければならないのですが、アイルランドカトリックに属する主人公はその一行に便乗してアイルランドカトリックの修道会規則を聖別・・・認可してもらう為にローマへ。

 時代設定的にちょうどイスラムが勃興し、アラビア半島から周辺域に征服行を開始した頃なので東方のキリスト教徒たちがローマに亡命してきている様子も背景に描かれています。まぁ大司教任命予定者が献上品の品々を奪われた挙句に殺されていた、というのが事件の発端なんですけれども。

 本来ならばこれはローマの当局によって解明されるべき事件なんですけれども、ケルト、ローマ両カトリックの紛糾した宗教会議の直後であり、殺されたのが論争に勝利したローマ・カトリック側である事を教皇庁は重視。不十分な調査、決着では火種が残り再び騒乱がブリテン島に起こりかねないと判断して、前巻活躍したフィデルマの話を聞き、ケルトローマ・カトリックの双方から調査する人間を出して解決させると。流れとしては前巻と同じですね。

 あとは高級聖職者の地位を巡るスキャンダラスなこと。自分本位な醜怪な人の行動。色々出てきますねぇ。捜査初動で主人公が侮られるのはいつも通りですが、古代からローマは既婚婦人はともかく未婚婦人は公の場に出る事はできず、家長の支配下におかれる傾向があるので、主人公みたいな女性が主導権を握る事に眉をひそめる感じになります。まぁ徐々にその能力を知り開襟していきますけれども。

 今、長編三作目。故国アイルランドに戻って事件に関わる姿を読んでいますけれども、一応故国では高級弁護士であり王侯さえも、こと法律に関しては対等の立場で会話できる人なのに、若い美貌の女性という外見のせいで初対面では侮られています。こういうパティーンなんですな・・・

 

 こいつをやっつける為の日記なのに『フィデルマ』で分量取り過ぎてしまた。

 日本での知名度がいまいちですが(自分もほぼ知らなかった)、ルネサンス期に活躍した著名な傭兵隊長の評伝です。表紙の絵は見た事ある人もいるかも知れない。自分も見た事はありましたが、描かれているのはスフォルッツァだと思っていました。

 イメージ的に戦国武将に似ていますが戦国大名にはなれなかった感じ。ウルビーノの領主ですがローマ教皇に属するので独立していないし、政治力と軍事力で敵対者を倒し、教皇ナポリの王など、当時のイタリア五大国と傭兵契約を結んで高額の収入を得て、それで自分の居所を飾り立てていて、それが世界遺産級として残っていると。

 同時代の日本は木造建築ばかりで火災に弱く、なかなか後世に残りにくいのですが、石造りの建造物は堅牢で、それが今も残っている感じ。逆に同時代のイタリアの古文書ってそんなに残っておらず、どちらかというと文筆業を二の次にしているヨーロッパの風潮が解るような気がします。なーんか語られる資料が建造物であったり絵画であったり彫像であったりと美術品が多く、古文書になると編纂物を主にせざるを得ない。日記や台帳という一次資料の残存が少ないって事なんですかね。そんな事を感じました。