pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

クリーン

 見終わった後に気が付いたのですが、主人公の名前、色んなものにかかっていたのねーっと。

 

 エイドリアン・プロディさんって自分は『戦場のピアニスト』の主人公のイメージか、他の映画で見たキ印なキャラしか知らないのですが、見終わった後の印象は足して二で割ったけど『戦場のピアニスト』寄りって感じ。

 WOWOWのコメントでは『元殺し屋がギャングに狙われた隣人の少女を助ける』という内容だったので、全編アクションなのかしらん?と思ったのですけれども、エイドリアン・ブロディってそういうキャラぢゃないよなーっとは思っていました。その通りです。元殺し屋の事前情報がなければ、かつて薬物で人生を壊してしまった、ごみ収集車の運転手で、悔悟から建物の落書きを塗りなおしたり、物を直したり、隣人の、祖母と二人暮らしの少女にお弁当を作ってあげたり・・・つまり人生の再生の物語として語られ始めるんですよねー。

 その一方で出所するギャングの息子を父親からの目線で語るシーンが始まります。息子にはアフリカ系を含むストリートの不良仲間がいて、父親や組織の迎えよりも息子はそちらの出迎えを受けます。こりゃ「良心的なギャングのボスが我儘に育ってしまったドラ息子に手を焼く」といういつものパターン化と思ったら、様子が違う。父親は闇取引やら報復やらの現場を息子に見せつけますが、息子の方はそれを嫌々見ている感じ。家庭内の雰囲気も圧倒的な父権に妻を含めた家族が恐怖を覚えながら従っているという様子で、その一方、ギャングのボスは敬虔なキリスト教徒であり「自分は子育てに失敗した」と嘆き神父に懺悔する面を持つ。

 実は主人公も実子なのか養女なのか、娘として育てていた幼いアフリカ系の少女を薬物によって失うという過去を持っています。それと合わせて考えると、これは失敗した父親たちの物語なのかな?と思ったり。

 二人の接触は主人公が色々世話を焼いていた少女が、まぁ主人公の触れて欲しくない部分に好奇心で踏み込んで、手ひどく拒絶されて、父親に反抗するような気持ちで不良少年たちのグループに接近し薬物に手を出してレ〇プされそうになったところ、偶然に主人公に助けられるのですが、その時、主人公はレンチで不良少年たちを半殺し(もしかしたら〇しているかも)の目に合わせるのですけれども、その中にギャングの息子がいたと。他の作品ですと息子が死ぬとか、手厚く治療させて復讐を誓うとか、なんですけれども、医師が専門医に見せれば完治できるというのに、傷を残したままにすると残酷な宣告。その上で主人公への報復を開始するのですよね。これって自分に従わない息子への懲罰と考えている節があり、また自分の面子を最優先しての判断で別に息子の事を考えての事ではないように見える。

 なーんか、恣意的な家父長制の醜悪さというものをまざまざと見せつけてくれた作品だなぁ、と、そういう感想が一番強かったですねー。ラストはその醜悪さ故に自らの行為に『復讐』されていく様子が描かれていました。

 今のロシア軍の行為や状態と重なって見えるのは、気のせいかな。