pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

酒見賢一さんが亡くなった

 ご冥福をお祈りします。でも、ちゃんと読んだ事がある作品って妹が持っていた『後宮物語』ぐらいなんですけれどもね。第一回ファンタジー大賞受賞作品で、別に剣も魔法も出てこなくて、どこがファンタジーかって、あっ、完全創作世界だかにか、と。TVの一時間半アニメ作品になり、それを見て読んだのか、読んでからアニメを見たのか、ちょいと覚えていませんが、勃興、英雄物語の前日譚みたいな話が新鮮でした。

 その後、自分は歴史小説よりも歴史研究者の著述そのものの方が面白くなってしまって、当時、あんまり中国史の研究も新鮮味を感じられなくなっていたものですから酒見さんの作品に触れる事が無くなってしまったのですけれども、『墨攻』あたりを読んでみたいかな、と思いました。漫画化も映画化もされている作品だしね。

 んで今回は歴史ものの漫画です。

 

 ハンガリー王の牢獄に収容されてしまったヴラド。この後十二年ほど閉じ込められてしまうので、自分的には終わったと思っていたのですが、さにあらず。歴史上に現れていない時期にこそ創作の翼を羽ばたかせる余地がある訳で、獄中のヴラドがモルドヴァ公と組んでハンガリー、ワラキアを翻弄するという展開。wikiだとモルドヴァのシュテファン三世がやっている事ですが、この漫画ではヴラドとシュテファンはまぶだちで、双方ともに小さな祖国の防衛に全てを捧げている存在なので、深謀遠慮のもと、協力し合っている設定。

 wikiを見る限り数年後にヴラドが三度目のワラキア公位つくまで、激しく公位は争われて、ほとんど一年ごとに交代している始末。乱世も乱世ですよね。面白い(当事者には地獄)の時代だから幽閉されているヴラドに出番がないのはもったいない。だから、この頃勢力を伸張させたハンガリー王の私的な顧問、つまり相談役となって活躍するという展開に。建前は幽閉されているので、つまり安楽椅子探偵みたいなもの。

 たぶん次巻からそういう活躍をして、オスマンのメフメト二世と対峙するんだろうなぁ。そうか。そういう展開もありなのか。なるほど。面白いですねぇ。歴史物語の書き方として、空白の、研究者だと何も書けない隙間が著者の発想、想像力で事後と違和感なくつなぎ合わされていくのを見るのは心躍ります。そうか、そういう話にするんだ!!って。この物語、今ところ自分的には当たりです。次巻も楽しみです。