pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

穢れについて、どーすんだろ

 大河ドラマ『光る君へ』なんですけど、見ている時には「変だな」としか思わなかったのですが、ペケッターで研究者の方が「ヤバい」と言っていたので、ああ、そうぢゃん、と思ったのがドラマ終盤で道長次兄の道兼が、衝動的に、まひろ母を差し殺してしまった後のこと。屋敷に血しぶき浴びた状態で戻っているのですよ。

 平安貴族は、清浄でなければならない天皇に仕える役人で、つまり汚れた状態で天皇が住まう内裏、役所がある大内裏に出仕する事はできない存在です。身内で死にかけた人が出たら、河原に放置するぐらい死穢を厭う貴族たちですから、出血も穢れ対象。つまりあの状態で道兼が帰宅しちゃうと屋敷に住んでいる人たちも穢れを被ったという事で、潔斎したりおこもりしたりと手続きを踏まないと出仕できない、権力争いしている父兼家にとって天皇に出仕できない状態というのは致命的であり、脚本の流れとは言え、ヤバい話です。二話の予告でなんかケアするような話も出ていたので、二話の状況を見守りたいですけれども、平安貴族を描くのに穢れを厭う彼らの日常を無視してしまうと、根底から崩れるよなぁ、となんか危機感を感じました。や、そんだけの話ですけど。

 そして読み終わったもの。

 

 三国時代の、非漢族の周辺諸族と三国それぞれの関係を論じたもの。曹魏と周辺諸族の関係は、まぁ知っている事が多かったのですが、何故蜀漢西南夷を服属させた事で国力が上がったのか、ちっとも実感が湧かなかったのですが、内陸のミャンマー経由でインドと交易路が存在し、その利益で国が富んだという事実があるようです。そもそも諸葛亮の元々の計画では中国本土の益州荊州、そしてベトナムに繋がる交州を支配し漢中と襄陽の二手から北伐するというものでしたが、当時の中国は黄河流域が中心で長江は北岸まで、長江をこえた南側が辺境という認識です。益州は山向こうの辺地。多くが非漢族の、つまり支配するのが難しい人々の居住域で税だって効率よく取れる訳ではない。面積ばかり広くて支配できる人が少ない地域なのに、と思っていたのですが、交州は東南アジア地域との航路を利用した交易が盛んであり、つまり対外勢力との交易で利益を出し、それを軍資に当てる、という前提で考えていたのですね。まぁ交州、荊州孫権との争奪戦に敗れたので、アカンかったのですが。

 そういう文脈だったのですねぇ。あ、あと既存の研究者とは違う視点、解釈で語ってみえるのが楽しかったです。『泣き虫弱虫諸葛孔明』を読んでいるので、なかなか面白いです。