pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

『軍港都市』

 ちょいと前に東大の小泉先生が「軍事は消費ばかりで生産性のない営み」みたいな事おっしゃっていたのを聞いたのですが、それを思い出しました。

 

 もともと幕末に製鉄所がつくられた事をきっかけに、軍艦の造船所がつくられ、そこから海軍の諸機関が設置されて『軍港都市』となったのが横須賀だそうで、半農半漁の寒村しかなかったところに軍人関係者が集中、その軍人相手の商売をする人たちが集まり・・・つまり軍人関係以外の産業が育たない土地に。その盛衰は露骨で、日清、日露戦争を経て拡張され、第一次大戦の好景気に盛り上がるも、戦後の軍縮になるとアッいう間に不景気に。更に関東大震災が追い打ちをかけるという感じ。

 軍事にたよった経済ではいかんと他の道を模索するも、横須賀の存在する三浦半島にはそんなに平地がある訳ではなく、残された土地で何ができるかといえば造船とか・・・あ・・・って感じ。

 結局の横須賀の(限らずかもだけど)景気が良くなるのは満州事変からこっち日本が軍事態勢になってからで、やっぱり軍事によってしか成り立たないという・・・自分、戦時中の学徒動員で工場で働いた学生さんって地元の人たちだと思っていたのですが、それは名古屋とか大都市の工場の話で、もともとの人口が少ない、そして熟練工が出征させられた工場地帯はよその地方から学生が働きに来ていたのですね。横須賀は東北地方の方が多く、その方たちで人口が急増。終わったら半分ぐらいに人口が減ったというのだから、なんというか、はい。

 第二次大戦中は軍事拠点だというのに、そんなに空襲の被害を受けず終戦。記述を見る限り修復不可能なダメージを受けた戦艦長門の対空砲を外して、防空体制を強化していたから、横須賀への空襲は米軍爆撃機にかなりの被害をもたらし、空襲を諦めたみたいな感じです。

 戦争が終わり、日本も非武装国家を選択し(たようにみえた)、これからは『平和産業都市』になるんだーっと、米軍の占領が終了したら、そうなると思っていたら、朝鮮戦争からの冷戦開始で横須賀は米軍第七艦隊の司令部が置かれる、やっぱり軍港都市に。

 兵士の犯罪という沖縄と同じ問題を抱え、軍事関係以外は観光ぐらいが主な産業という、沖縄よりも深刻な問題を持ち、日本が島国でシーレーンが生命線である以上、制海権を制する為の艦隊の司令部が置かれ続ける運命にあるのは避けられず、住民の意志がどうあろうと海軍とともに存在する都市であるというのは、なんか、こう、アレですね。