pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

むっちゃ面白い

 新鮮というのもあるし、目から鱗、というのもあります。

 

 2020年代のイランの入門書として最適というか、読み物としても面白い本です。そして政教一致の独裁というものが、どれだけ救いようのない絶望をもたらすのかというのも。そのせいでイスラム離れというものが進行していて、「イスラムなんてアラブ人の宗教ぢゃないか」とばかりに、他の宗教に救いを求めたり、無宗教になったりしているみたい。まぁ政治的失策を「君らの信仰心が足らんからだ」などと言われちゃあ、やってらんないわよね。あ、イラン人は古代最初の世界帝国であるアケメネス朝ペルシアをつくった自分たちに誇りを持っていて、アラブ人も田舎者の遊牧民って思っている人が多いみたい。

 しかしイランの人たちには『独裁者』になりたいって願望が一般庶民にも強いものがあるらしく、皆個人事業主になりたがり、従業員をこき使って辞められて衰退していくという事を繰り返すそうです。あと個人的なつながり、コネとかを優先しがちで公正な行動、遵法精神よりもそちらを大事するので、賄賂や不正が横行する。

 でもこれって、イランだけの話ではないですよね?って思う。コネよりも遵法精神を優先させる人が多いと、社会の公正感(公正であるとは言わん)が保たれ、独裁とか防ぐ傾向になると思うけど、コネ、つまり人との繋がりが最優先されると個人に権力が集中していくような気もする。

 あと、かつての日本人もそうだけど(今はそうでもないと信じたいけど)、英雄、救世主待望感が強く、優れた個人によって諸問題が一気に解決される事を願うってのが、独裁者を生む土壌になっているのかと思う。今のイスラム体制だって、恣意的にお金を使い、検閲を行う国王よりも、イスラム法学者の方が優れているって思って革命を起こしたら、政治的失敗を信心のせいにされて、つまり政府や最高権力者は責任取らないなんて事になっている。

 信仰って個人的なものぢゃないですか。それを公的なところにまで言われるのは「ほっといてくれ」って気持ちになりますわな。表題の『地下世界』っというのは公的メディアや表面には表れてこない、プライベートなイランの人々の世界って意味で、アンダーグラウンドの方がイランでは広々と広がっている感じがするので、この本に書かれている事が実態に近いのでしょうね。中央アジアやイランが好きすぎて何十年もイランで住んだり日本に帰ったりを繰り返している人で、あまりにも赤裸々に描きすぎたから当局につかまったりしたら困る~って偽名を使っているぐらいだし。

 あと日本でイラン人が話題になるって麻薬の売人ネタが多いのですが、なんかマリファナに対する考え方が、日本人の酒に対するものと似ていて、不法とか思っていないから麻薬の売人が多いのかも知れないって思ったり。イラン人、イスラム法では禁止されているけど自家製の密造酒とか密輸品とかでプライベートで酒盛りやっているので、プライベートなら麻薬もOKって考えている人が多いんぢゃないかしら。

 詳しくはこの本を読んでください。物凄く読みやすくて楽しい本なので。