pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

鼻水で溺れる

 この表現は一年にはやりますが、絶賛そんな感じです。それにも負けずに感想書きましょう。歴史もの二冊・・・いや研究者の方が一般向けに書いたものなんですけれども。

 

 古代律令制っていうと支配者サイドの一番表看板なところしか今まで見てこなかったので、支配の大本の部分。つまり行政の現場がどんな感じであったのか、というのを教えてくれる本です。まぁ律令制って言っても結局中国王朝制度を借りてきたものでしかなく、そちらの社会システムを前提に設計されているのに、そのまま持ち込んだら現場で機能不全になる訳で、それを補完したものが地方支配の実際を担っていた、在地の豪族たちであると。

 中央もその重要性を認識しており中央派遣の国司は任期あるけれど、その下の郡支配を司る、地方豪族が任じられる郡司は終身。そして建前上でも天皇による書類審査を経て就任する形になっています。つまり行政の現場と天皇が直接つながっているアピール。

 終身制で後任は現任推挙が原則、みたいな事が書いてあったらこいつは世襲になるな、と思いますが、ほぼほぼ各郡司は十年前後務めると交代していたようでして、どうも一つの郡に複数の豪族が存在しており、持ち回りで郡司を務めていたみたいです。たぶん一つの一族で独占するとトラブルでその一族が壊滅してしまったらまずいとか、そんな感じではないでしょうか。現在よりもはるかに過酷な生存条件の時代です。天候不順、疫病、地震などの天災でダメージを負う事は頻繫だろうし、一族全滅なんて憂き目は簡単に起こりそう。なので地域社会を守る為に複数の豪族が並立していたのではないかな?と想像したり。

 あと行基が橋をかけたとかため池を作ったとかという話。あれは彼自身が地方豪族出身で、そのネットワークを使いインフラ整備していたようです。豪族たちも自分たちの利便性、収益に直接かかわる話ですし。あとこの地方豪族たちが後年の武士階級の直接的先祖になりますね。

 もう一つ書けるかな。

 

 戦国後期から江戸初期の約一世紀に渡ってイエズス会が観察した日本の話です。時の権力者と結びついて一気に布教を行うというのは宗教者の常套手段であり、その為、誰の許可を得れば効率よく浸透できるかを見極める為、彼らは当時の日本の支配構造を知りたがった訳ですが・・・一番面倒くさい時期にきてしまいましたね。日本全土に威令を及ぼす存在が誰もいない時期でしたからね。ただ天皇が本来の支配者であり「天下人」はその委託を受けて実際の支配を担う存在であると理解したようです。

 よそからの目で自分たちの歴史を見直すというのも面白い事ですね。あと当時の日本を『帝国』と評価し軍事力を高く見積もっているという説がありますが、あくまで日本の状況を西洋基準に例えるとどんな感じなのかを説明しただけ、なので深い意味はないようです。中国皇帝すら『中国の国王』と表現していますもん。国力はあちらの方が断然上なのにそういう表現なので、これは彼らにとって中国の支配状況の方が理解しやすく自分たちの社会の国王と同じシステムだからで、日本のように権威と権利が乖離して王権が二つある方が理解しがたい事ですもんね。