pomtaの日記

だいたい読書感想か映画感想です。たぶん。

ずいずいずっころばし

 思い付きで童謡の一節を書きましたが深い意味はないです。読み終えた本がこれだからです。

 

 後漢末以降四百年ほど分裂していた中国を再統一しつつも、二代目皇帝の代で滅亡してしまったという「流星王朝」とは言いえて妙だな、と思ったのですが、この本の内容は初代文帝楊堅の父親から始まる親子三代の物語で大河ドラマ風ならば「隋~楊家三代」みたいな感じです。

 楊堅の父楊忠は北は遊牧民の草原から南は長江南の南朝まで放浪し、北周において軍功を立てて立身出世。北周に対して忠誠・・・というか個人的に恩義がある北周武帝に忠誠って感じですかね。あと恩義がある先輩武将との縁故も大事にして、その先輩が失脚しても先輩娘と自分の息子楊堅を結婚させたとか。

 楊堅は娘を皇后にして皇室外戚となった事を足掛かりに北周を乗っ取ったという人ですが、意外にも最大の抵抗勢力は娘の皇后で、まぁ娘の立場からすれば、皇后、皇太后と皇帝家の長老、家父長権を握り最高権力者になれる筈なのに、父親が皇帝になったら単なる皇女でしかなく社会的地位が低下するんですもん。そら嫌だわな。

 この文帝が大変手堅いのですが、一つだけままならないのが家庭内のこと。奥さん、強い。まぁ浮気を許さん、というのは解らんでもないけれど、そして夫婦仲はいいので何人もの息子と娘に恵まれているので、血統継承の面からも大変結構なのですが、愛情の裏返しか過干渉が、特に長男に対してのそれが。まぁ長男が放蕩気味なのに目くじらを立てるのですが、事は皇位継承問題。これに次男、のちの煬帝が付け込み兄貴を失脚、最終的にはぬっ殺す事に。

 最終的に隋を滅亡させる事になる煬帝ですが、大運河を掘削する事は開発著しく経済発展を遂げた長江南と、政治的中心地である黄河中流域をつなげる、つまりは経済政策として優秀だったと。それをつかっての各地を船団で航行する行幸も運河の運営テストとして必要でした。北の突厥、西方を支配下におさめるのも安全保障、交易路保障には必要でした。んが高句麗戦が躓きに。

 どうも煬帝くんは、前漢武帝を規範としていて、その業績を越えようとしていたのですね。それはいいけれど父親文帝は衆議を重んじ、つまりコンセンサスをとって責任者をつくって政策を実行するから、部下はある程度意見を取り入れられ、失敗したら責任者に責任を取らせる事が出来たのですけれども、煬帝君はワンマン経営をやりたがる独裁者。上手くいけばいいけれど、失敗すると自身に全て返ってくる。また側近のいう事だけを聞くようになり配下の不公平感が募り、最終的には多くの者が彼を見捨てていく事になる・・・これ、同時並行で読んでいたヒトラーの話と同じだな。その本は十年以上前の発刊なので目新しいのはなかったから感想は書きませんが。

 著者によるとどうもこの煬帝を反面教師にしたのが唐の太宗だと。境遇は比較的似てますね。父親の尻を叩いて天下取らせたのは違うけど、軍事的才能があり、兄と弟を排除して皇帝になり、天下統一して遊牧民を屈服させ、高句麗戦は敗北するとこまで同じ。性格も似ているけれども若いうちは意識して部下の意見に耳を傾けていたけれども、年食って成功が積み重なるとワンマンに・・・これもどっかで聞いた事ある展開・・・

 まぁワンマンよりも意見を取りまとめる調整能力の高い人の方が、リーダーとして信頼されるし評価されるし終わりを全うできる率が高いような気がしますね。